5. 宇宙は無限か? 有限か?
ところで、図2のいちばん上で宇宙空間をなんとなく円板で描きました。 前節では、宇宙空間をなんとなくですが、「たて・よこ・たかさ」の軸を無茶苦茶大きく伸ばした空間としました。
ここで、気になった方もいらっしゃったかもしれませんが、宇宙空間は、本当に無限に大きいのでしょうか?
無限に大きいといわれたらそれはそれで不思議な気もします。でも、有限といわれると、では“はしっこは”どうなってるのでしょう? 宇宙をどんどん、まっすぐ進んで行ったらどうなるのでしょう? 気になりますね。少し考えてみましょう。
そこで、次元を1個落とした例を考えてみます。
地球上のどこでもよいので、どこかの場所、1カ所に注目しましょう。その場所には、「たて、よこ」の軸が取れます。原始人は大地は無限に広い平面だと思っていたかもしれません。どんどん、まっすぐ進んで行ったら、どこに行くのだろう? と思っていたかもしません。しかし、実際にまっすぐ進んで行ったら、もとの場所に戻ってきます。無限に広い平面だと思っていた大地は、実は球面でした。
このように、球面はどの箇所にも小さく「たて、よこ」の軸が描ける(図5.1)けど、無限に大きい平面ではない。大きさは有限でしかも“はしっこ”はありません。さらに、球面は平面に埋め込めません。

これと同様に、宇宙も、以下のような性質を持つ可能性があります。
まず、どの箇所にも小さく「たて・よこ・たかさ」の軸が取れるけど、無限に大きい空間ではない。大きさは有限。宇宙空間を、どんどんまっすぐ行ったら、もとの場所に戻ってくる(!)。“はしっこ”は存在しない(!)。
そういう形をしているかもしれません。
空想して下さい。
そういう可能性の(気持ち的にいって)いちばん簡単な例が、3次元球面というものです。ふだん見ている球面は、2次元球面ともいいます。3次元球面は、その次元を1個あげた類似物です。
宇宙は「3次元閉多様体」というものである可能性もあります。 3次元球面は「3次元閉多様体」の例です。このことは、過去の記事「『多様体』とはどんなもの?」に書きましたので、詳しく知りたい方は参照してください。
3次元閉多様体は、3次元空間に埋め込めません。 4次元空間にも埋め込めないが、5次元空間には埋め込めるというものもあります。
宇宙空間について、なんだか妙に不思議に思うことを考えていたら、新しい概念に遭遇しました。
・小さい部分を見ると3次元空間、
・全体としては3次元空間ではない、
・全体としては3次元空間に埋め込めない、
そういう図形に辿り着きました。
専門用語で言うと、3次元空間に埋め込めない3次元多様体というものの例です。
初心者の方は、これは、一体、どんな図形なのかなあ? この図形を4次元や5次元に絵を描くってどうするの? と思いを馳せていますか。
宇宙の神秘を考えると、こういう数学の高次元や多様体に遭遇します。
実際、本稿のように、宇宙の話は、4次元や多様体を勉強する時に、それらの導入にも役立ちます。さらに、宇宙の研究は、多様体や高次元の研究の原動力のひとつです。あるいは、多様体や高次元の研究は宇宙の研究を駆動させます。
ブルーバックス読者の皆様ならごぞんじでしょう。宇宙はどんな形か? 宇宙は何次元か? というような議論が世界各地の大学や研究所で大まじめになされています。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)のある相模原市のもと観光親善大使の岩永優花子さんが、宇宙の涯てについて皆様に問います。
是非クリックして御覧になって御回答下さい。