これから私たちが選ぶ服には、サステナビリティの観点が外せません。それに応えるように、いまファッション界では新たな技術革新とクリエイティビティが加速中。『WWDJAPAN』編集統括兼サステナビリティ・ディレクターの向千鶴さんがサステナブルファッションの潮流を解説します。

向千鶴(むこう・ちづる)
『WWDJAPAN』編集統括兼サステナビリティ・ディレクター。2000年にINFASパブリケーションズ入社。記者として主にデザイナーズブランドの取材を担当。『ファッションニュース』編集長、『WWDジャパン』編集長などを経て21年4月から現職。

 

業界のサステナブル思考は
2018年頃から急激に盛り上がった

サステナブルな思考を持った先駆者たち

ファッション界に“サステナビリティ”という考えが浸透したのは、本当にここ数年のことです。けれども、そういったスタンスでファッションに関わっている人たちは以前からいました。例えば、1979年にスタートしたイギリスの〈キャサリン・ハムネット・ロンドン〉。デザイナー本人の名を冠したブランドは、土を荒らしながら大量生産するコットンの生産背景に早い段階から注目していました。環境以外にも貧困や戦争などの社会問題に切り込み、強いスローガンをプリントしたTシャツを発表し、注目を集めました。現在のサステナブルファッションを牽引する次世代ブランドは、この時代の影響を受けて育っていると考えられます。

KATHARINE HAMNETT LONDON/環境、政治、ジェンダー、反戦など社会問題に強い関心を持つデザイナー、キャサリン・ハムネット。1983年、反核や平和運動へのスローガンを掲げた「Choose Life」などのTシャツのコレクションを発表。他にも「第三世界の負債をなくそう」「58%はアメリカ製弾道ミサイル、パーシングを望んでいない」といったスローガンを掲げたメッセージ性の高いコレクションを発表している。katharinehamenett-1979.jp Portrait of Katharine Hamnett/制作:Katharine Hamnett
KATHARINE HAMNETT LONDON/2021年より展開するアーカイブコレクションのもの。

その次のムーブメントとして台頭したのが90年代のアメリカの企業です。主には〈パタゴニア〉や〈ナイキ〉といったアウトドア、スポーツをベースとしたブランド。〈パタゴニア〉は環境問題についてかなり前から活動していました。80年代、使用していた化学薬品が従業員に害を与えていることが判明したのを機に、衣類それぞれを製造する全工程の追跡をはじめたといいます。さらに1996年までにはスポーツウェアの全製品ラインのコットンを100%オーガニックコットンに切り替えました。

〈ナイキ〉は、1997年に児童労働問題が発覚しました。東南アジアの工場で、児童労働や劣悪な環境下での長時間労働が問題視され、世界的な不買運動に。そこから目覚めて企業としてのあり方が大きく変わりました。現在、アウトドア系、スポーツ系は意識の高い企業もかなり多いですが、それぞれの業界でこの2つのブランドが先駆者と言えますね。