世界一、入試倍率が高い理系大学はどこかご存じだろうか。それはインド工科大学(IIT)だと考えられている。IITは理系国立大学の総称で、インドの主要都市に23校存在する。合格率は約1%で、不合格者はアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に入学するとまで言われている。
卒業生には、グーグルの現CEOスンダル・ピチャイ、インフォシス設立者ナーラーヤナ・ムールティやソフトバンクの元副社長ニケーシュ・アローラーなど、世界のITトップ企業で活躍する人材が多くいる。

その世界一難関のIITに驚異の合格率を誇る私塾がインドの片田舎にある。しかも学費、寮や食事や教材等も全て無償で提供しているというのだ。
私塾の名は「スーパー30」。創始者であるアーナンド・クマール氏は貧困家庭に育ち、ケンブリッジ大学に合格したものの、旅費が足りずに留学できなかった天才数学者だ。そんな彼の波乱万丈の半生を映画化したボリウッドムービー『スーパー30 アーナンド先生の教室』が9月23日(金)に公開される。

今回、アーナンド氏にインタビューができたので、タイム誌に「アジアで最も優れた学習塾」と称された「スーパー30」やインド人の世界的な活躍の理由について聞いた。

主演のリティク・ローシャン(左)と「スーパー30」創始者のアーナンド・クマール先生
『スーパー30 アーナンド先生の教室』あらすじ
貧しい家庭の生まれながら天才的な数学の才能を持つ学生、アーナンド(リティク・ローシャン)。ある日、誰も解けなかった数学の難問の解法をケンブリッジ大学に送ったところ、大学の学術誌に掲載され、留学生として招聘されることに。しかし、貧しい家計から旅費が出せず、当てにしていた援助もすげなく断られ、いつも彼を励ましてくれていた父親も心臓発作で亡くなってしまう。留学を断念した失意のアーナンドは、町の物売りにまで身をやつすが、IIT進学のための予備校を経営するラッラン(アーディティヤ・シュリーワースタウ)に見いだされ、たちまち学校一の人気講師になり、豊かな暮らしを手に入れたが……。
-AD-

仕事も縁談も投げうつほどの思い

――アーナンド先生は予備校の人気講師として豊かな生活を送り、恋人との縁談も進んでいたのに、すべてを投げうって無料の私塾「スーパー30」の設立に奔走された様子が映画の中で描かれています。ケンブリッジ大学を金銭的な理由で諦めた経験があるとはいえ、なぜそこまでの情熱が持てたのでしょうか。

アーナンド先生:インドには貧しい人がたくさんいて、父も私も貧しくて勉強する機会をまともに得られませんでした。裕福な家庭の子どもたちが通う予備校の講師をするなかで、貧しい人たちの教育のために一生を捧げたいという思いが一層強まりました。設立できるか確証はなかったけど、「Yes, we can(私たちならできる)」を信じていたんです。

『スーパー30 アーナンド先生の教室』より

――ちなみに、アーナンド先生と恋人の悲恋は脚色なのですか?

アーナンド先生:ラブストーリーの部分については詳しく言えませんが、いまではお互いにそれぞれ家庭をもっています。この映画の90%は本当に起きたことです。父が心臓発作で亡くなったことも本当ですし、私を演じたリティク・ローシャンが自分の影のような存在に感じられたぐらい。私だけではなく、一緒に見ていた家族全員が何度も涙を流しました。映画を楽しむだけでなく、当時の感情を感じていましたね。

『スーパー30 アーナンド先生の教室』より