頼りになった「猫互助会」の仲間たち

3匹との愛猫との晩酌(熊本さんは医療ライターなのに、飲酒量も適量よりやや多めになりがち。でもその分、つまみは自炊でヘルシーを心がけ帳尻合わせをしているつもりだった)を生きがいにしていた熊本さん。突然倒れ、救命救急センターに緊急搬送され、心肺停止から50分後に人工心肺につながった。この間、熊本さんの意識はない。体温を35度に下げ、動物の冬眠状態のようにしてダメージを受けた脳を回復させる処置が行われたという。

そして、集中治療室(ICU)に熊本さんの家族が集まった。「男性医学の父」と呼ばれた名医の熊本悦明医師をはじめ、姉夫婦、妹夫婦の5名。突然のことに混乱する中、家族会議が開かれるが、妹さんの夫からは、「お姉さんの飼っている3匹の猫の面倒は勘弁して~~」(『山手線で心肺停止!アラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』より)という発言が……! 猫が苦手なことが発覚……。

(c)上野りゅうじん、熊本美加『山手線で心肺停止』より

でも、この後の漫画のコマにホッとする。熊本さんは一人暮らしでまさかの事態があったら、特にペットがいる場合は誰に託すかで揉めたりするので、友だちとお互いのペットの面倒を見る態勢の「猫互助会」を作っていた。実際に、心肺停止で倒れたときにも妹さんが猫互助会の友人さんに連絡を取ってくれたという。猫互助会の友人たちがローテーションを組んで、熊本さんの3匹の愛猫をお世話してくれたというのだ。

著書の中には、詳しく「猫互助会」についても触れられている。

熊本さんと一緒に暮らしている3匹(フリー、にゃびし、ママン)の猫はみな保護猫。にゃびしとママンは、のびのびと公園で暮らしていたのに、心ない人から石をぶつけられるなどの虐待を受けて保護され、猫ボランティアさんとのご縁で熊本さんのおうちに迎えられた。そんな過去のトラウマもあって、人見知りが激しく普段からペットホテルに預けるのはハードルが高かったという。

熊本美加さんのおうちの3匹のにゃんず。写真提供/熊本美加
 

以前私が飼っていた猫もペットホテルに預けた日から何も食べなくなり、急いで旅行先から戻ってきたことがあった。「猫は家につく」とよく言うが、預ける環境によっては合わないことも多い。

熊本さんはペットホテルという選択がないことからいつも家に来てケアしてくれる信頼できる「ペットシッターさん」とつながっていた。ただ、信頼できるペットシッターさんは人気が高く、お盆や年末年始といった繁忙期には激戦になることも。突然の闘病となれば、長期ケアになってしまうのでお願いするのはさらに難しくなってしまう。

そこで私は『猫互助会』を結成していました。同じ境遇の猫飼い仲間に合鍵託し、仕事、出張、急病、親の看護や介護などの際に、何かあれば「お互いさま」と助け合うグループです。おひとりさまの猫との暮らしを支えるのは、遠くの親戚よりも近くの友人! 猫互助会のメンバーに鍵を預けていたお陰で、にゃんずを密室に閉じ込めずにすみました。私の心肺停止からリハビリまでの2ヵ月もの入院期間中、入れ替わり立ち代わりわが家を訪れ、にゃんずのお世話はもちろん、部屋の掃除、ベランダの植物への水やり、さらに自宅から必要なものを病室に届けてくれたのです。

もうひとつよかったのは猫互助会メンバーが、元々私の妹交流があったこと。連絡先を妹が知っていたので、すぐに全員に連絡がつき、倒れた翌日に私がいないわが家で、『緊急猫対策本部会議』が開かれたのです。


(『山手線で心肺停止!アラフィフ医療ライターが伝える予兆から社会復帰までのすべて』より)より)