テレビでも話題になった「看取り犬」のいる施設

先日、NHKで放映された『“看取り犬(みとりいぬ)”とワンダフルライフ』というドキュメンタリー番組に出てきた犬の姿を見て、衝撃を受けた。

その犬は特別養護老人ホームで飼われていて、入居しているお年寄りに死期が近づくと、その人のベッドに上がって顔を舐めたり、体をこすりつけたりする。その姿を見て、家族や施設の職員は、「お別れのとき」が近いことを察知するのだという。人生の終わりを静かに迎えようとしているお年寄りの顔を何度も何度も舐めては、一生懸命に体をこすりつける犬。そのいじらしいような無心の仕草が心に突き刺さるようだった。犬の名前は文福。推定年齢12歳〜13歳で、神奈川県横須賀市の特別養護老人ホーム『さくらの里 山科』で暮らしている。そして、その行動から、施設では“看取り犬”とも呼ばれるようになっている。

入居者の方ととても仲良しな看取り犬の文福くん。写真提供/さくらの里山科
犬ユニットで暮らす入居者の方はみんな犬が大好き。文福くんも安心して甘えている。写真提供/さくらの里山科
 

『さくらの里 山科』は、犬や猫と一緒に暮らすことができる、全国でも珍しい特別養護老人ホームだ。施設内の2階から4階の住居フロアのうち、2階に犬と暮らせるユニットが2つ、猫と暮らせるユニット(※1)が2つ置かれている。

実はこの施設、私は4年前に一度、取材で訪れたことがあった。その時はどちらかというと猫ユニットを中心に取材したので、文福のことはテレビを見るまで詳しいことは知らなかった。

4年前、雑誌『おとなスタイル』で取材したときの猫ユニットの様子。撮影/関夏子

この施設で暮らす犬や猫は、それまで暮らしていた家から飼い主と一緒にやってきた犬猫もいれば、そうでない子たちもいる。文福は10年前に、保健所にいたところを動物愛護団体に救い出されて開設間もない『さくらの里山科』にやってきたのだそうだ。そして、これまで多くのお年寄りに寄り添いながら生活し、多くの人を見送ってきた。テレビで文福や施設の人たちの様子を見ていて、ふと4年前に取材した入居者さんや犬猫たちは、その後、お元気にしているだろうかと気になってきた。それで再び理事長の若山三千彦さんにお会いして、施設で暮らす入居者と犬や猫のお話を伺った。

※1:ユニットとは、10名前後の少人数単位で介護をするスタイルのこと。