「リベラルはまともに取材したのか?」
斎藤 「お前たちリベラルメディアは、これまで旧統一教会に何も言ってこなかったくせに、いまさら何だ」と言いたい気持ちもよく分かります。私は1997年に、カルト的統制を人事や労務管理に利用する企業を取材し、『カルト資本主義』(文藝春秋)という本を書いています。だからカルト問題と無縁だったわけではないんですが、統一教会や霊感商法問題は、当時私がテーマとしていた企業経営問題とは必ずしも一致しなかったし、また、昔から茶本繁正さんや有田芳生さんといったジャーナリストの先達がさんざん書いてきたことだったので、フォローしなかった。
だから私も「今さら何だ」というそしりは免れない。だからといって、表面化してきた統一教会問題をいまなお見ないのは、もっとおかしいでしょう。開き直りに聞こえるかもしれませんが、そもそもジャーナリズムやメディアって、社会問題すべてをいつでもカバーできているわけではない。苦しんでいる人がいるのに見逃していることはいくらでもあるのが現実です。だから、何かのきっかけで「これは大変だ」と分かったときには、見逃してきたことを反省しつつ、問題に向き合っていくしかない。
今回は、山上容疑者の供述や、被害相談を受けてきた弁護士たちの話がきっかけになって、私たちは旧統一教会の問題を改めて認識したわけです。自民党政治との密接なつながりも分かってきた。これはもう、なかったことにするわけにはいきませんよ。

花田 僕は統一教会のことを見ないふりして安倍さんを擁護しようなんて思ってないよ。全く逆だ。ちゃんと見ろと言ってるんだよ。教団は「現在ただいま」も、本当にそんなに悪なのかと問うている。
では聞くけど、あなた方リベラルジャーナリストは旧統一教会の「現在ただいま」の実態を把握しているの? 教団はいまも政治家が少しの接点でも持ったらいけないほど社会的に問題がある組織なの? ほんとに、まともに取材したの?と。
僕は旧統一教会を擁護したいわけではない。教団がかつてどういう団体だったのか、あなたがたより遙かによく知ってるからね。30年前、僕は『週刊文春』編集長で、当時、教団は霊感商法を派手にやっていたから徹底的に批判した。取材班にはまさに有田さんを擁して、一年以上、統一教会批判キャンペーンを張ったんです。
合同結婚式に参加した元新体操選手の山崎浩子さんが、親族や牧師から説得を受けて遂に脱会したときには、山崎さんに手記を書いてもらって大々的に載せもした。自画自賛になってしまうけど、いまふたたびあなたたちが旧統一教会を論じようというなら、参照すべき第一級の資料じゃないかな。『週刊文春』が記事を再掲する価値もあると思う。だから僕は、当時の教団の内実や恐ろしさをよく分かっているつもりですよ。
でも、いまの教団は、果たして往時と同じことをしてるのか? 違法、不法な霊感商法をいまだに続けているのか?
たしかに統一教会は、かつて違法な霊感商法をした疑いで摘発され、結果、有罪にもなりました。でもそれを受けて、2009年に教団はコンプライアンス宣言をして、姿勢を変えた。現に刑事事件は11年以降、皆無。教団の田中富広会長が先般の会見で言ったように、係争中の民事訴訟も1998年の78件から、今年2022年は5件にまで減っている。全国弁連がまとめる相談件数だって宣言以降、急速に減少しています。だから、虚心坦懐にデータを見たら、「現在ただいま」の教団は正常化してきていると言える。
斎藤さんは「いまなお」と言うけれど、いま弁護士らが問題事例として挙げている大半は、献金時が10~20年くらい前の、過去のことですよ。山上容疑者の母が高額の献金を繰り返して自己破産したのも02年です。