権威になったら週刊誌は終わり
花田 違うね。それらワイドショーのディレクターは朝日を見ながら企画を立てているんだよ。それは僕は局内からも証言を得ている。それに週刊誌も、朝日をはじめとする新聞に影響されている。だからやっぱり朝日が元凶。何より朝日を批判しなければいけない。日刊ゲンダイなんてまったく影響力ないもん。
『週刊文春』と『週刊新潮』にも納得がいかない。本来、新聞の論調の向こうを張ったり、新聞が調べないところを報じたりするのが週刊誌の存在理由なのに、最近はもろに新聞に追随している。ここまで同じ論調で誌面をつくるなんて、僕の経験や感覚からすると、ありえないことだ。いま彼らがやるべきは、新聞が伝えない「旧統一教会の本当の姿」ではないか。僕なら絶対にそうする。新聞と一緒の論調でやってるから売れないんだと言いたい。
僕らの時代の週刊誌の人間には、明治期の“羽織ごろ”じゃないけれど、自分たちはメインのジャーナリズムと違って大したメディアではない、野卑な存在だという意識があった。だからこそ、メインに楯ついたわけだし、思い切った企画もできた。だけど、いまの若い編集者は「文春砲」などと持ち上げられ勘違いした社会正義に燃えて、メインに物申す役割を忘れている。自らが権威になったら週刊誌は終わりだよ。

斎藤 腰の引けたメインの大新聞がやらないことを、いま『文春』『新潮』がやっているんですよ。花田さんは朝日を過大評価しすぎだし、新聞と週刊誌の現状認識がまるでずれてる。
統一教会の刑事摘発についても、少し言わせてほしい。米子市長は、統一教会はもう摘発されていないと言いましたが、だからといって悪くない証拠にはならない。そもそも、いまの日本の刑事司法は、そもそも信用に値する組織なのか。
花田 斎藤さん、そんなソッポな話を始めたんじゃ、議論にならないよ。リベラル得意の論点ずらしだ。
斎藤 先日、有田さんも証言してましたが、1995年に警察庁と警視庁の幹部がオウム真理教の次は旧統一教会を監視対象にすると言っていたのに、結局は、09年に関連企業「新世」の社長や幹部ら7人を特定商取引法違反で逮捕した程度で、教団本体にはまったく手を出さなかった。有田さんがなぜかと警視庁の幹部に尋ねたら、一言、「政治の力(に抑えられた)」と。
花田 僕は有田さんと一緒に仕事をしたので彼の取材力は知っていますが、その話はどうかな? 幹部というだけで名前を出してないし。
斎藤 そこを疑い出したら、調査報道なんて不可能になってしまう。匿名ならと話してくれる取材源あってこそのジャーナリズムじゃないですか。
花田 でも、その話が説得力を持つには、もう少し何らかの裏付けが必要だよ。それだけでは、都合のいいエピソードだという疑いを持たれても仕方ない。
斎藤 かつて大仕事に起用してくれた編集長にそんなふうに言われたら、フリーの書き手は浮かばれない。旧統一教会に対する見方に違いがあったとしても、ジャーナリストとしての有田さんのことは信じてほしいと思います。
花田 どの程度、信憑性があるか分からない話だから仕方ない。だって有田さんはいまになって急にその話を言い出したけど、この12年間、参議院議員だったんでしょ。その間になぜ追及しなかったの?
斎藤 有田さんは、いまこそこの話を出すべきだと思ったんじゃないですか。
(構成・山家圭)