自民党の癒着問題
斎藤 9月8日に政府自民党は旧統一教会との関わりについての点検結果を明らかにしたけど、およそ中途半端な内容でした。安倍氏をはじめとする政治家との関係はもっと徹底的に問い直すべきです。政治家があの教団と関係を持つことによる弊害は、社会的にも国家的にも深刻すぎる。
『週刊文春』などによると、安倍氏側と教団との関係は、反共を背景にした、岸信介時代のからの歴史的つながりというだけに留まりません。むしろ、この約10年で関係を深めている。09年に下野して新たな支援を必要としていた安倍氏と、同じ年に「新世」が摘発されて今後の組織防衛のために「政治の力」を欲した教団側との利害が一致して、両者は手を結んでいったのではないか。安倍氏は自ら積極的に関係を築いていったと言えます。
重要な論点を2つ挙げたい。それは、「情報・秘密管理」と「宗教2世」の問題です。
まず「情報・秘密管理」。大宅賞を受賞したジャーナリストの森健さんによる『文藝春秋』9月号の記事によれば、山上容疑者は02年に任期制の海上自衛官になったものの、母が統一教会信者だったのが理由の一つになって閑職に置かれています。自衛隊では「統一教会=韓国という認識であり、文鮮明は北朝鮮・朝鮮労働党の工作員との見方もある」との海自関係者の声を記事は明らかにしています。つまり山上容疑者は、経済安全保障で言うところの「セキュリティ・クリアランス(秘密保持の適正評価)」に引っかかり、身内にそんな教団の信者がいる人間を要職に就けるわけにはいかないと自衛隊内で判断されたわけです。
山上容疑者はいわば末端の自衛隊員でした。末端でもこんなふうに「セキュリティ・クリアランス」が問われるのに、今回、教団との深い関係が明らかになったのは、首相であった安倍氏のほか、閣僚や与党の政治家です。国家機密を扱う、最も「セキュリティ・クリアランス」が問われなくてはならない人たちが、北朝鮮に通じていると目される教団と、軽率にも、自らの意思で接点を持っていた。大勢の「信者秘書」たちの存在も、それこそ80年代の昔から、ずっと指摘され続けていた問題です。国家の中枢がまるごと機密を大幅に逸脱したかのようなこの事態をどう考えるのか。

花田 大袈裟な。接点と言っても、イベントへの祝電や出席、関連メディアへの登場、会費の支出など、政治家として常識の範囲内の「お付き合い」が大半で、教団側が議員の立法活動に深く食い込んでいるわけではない。重要情報が取られていたとも考えられない。斎藤さんもメディアも、統一教会との関わりを過大評価しすぎなんだよ。もっと冷静に見たらどうですか。
斎藤 騒ぎすぎの部分がないとはいえないかもしれません。それでもまずは、どういう接点があったのか、知りうる限り洗い出さないと。機密管理に瑕疵がなかったか、本格的な追及はそこから始まると思います。
それに、安倍氏自身は、例のビデオメッセージの経緯をみても、深く交流していたことは間違いない。