世界有数の森林大国である日本ですが、木材自給率は4割にとどまり、多くを輸入に頼っています。戦後に植えられた人工林を適切に使っていくことが、気候危機を止めることにもつながっていく。脱炭素社会に向けた、森と人の関わり方を考えます。

 

大切なのは、人が適切に人工林に手を入れること

「循環型社会のためには、人が森と上手に付き合っていくことが大切です」

柔らかな口調でそう話してくれたのは、「私の森.jp」編集長の赤池円さん。サイトを通して、日本の森の現状や、人と森のあるべき関係性を発信している。

日本は国土の7割が森林。そのうち4割を人工林が占めている。

「人工林とはいわば“木の畑”です。成長が早く、真っ直ぐ育つ針葉樹は建材に最適。今、日本に広がる人工林のほとんどは昭和30年頃に植えられたものです」

戦後の日本は深刻な木材不足に陥り、政府は拡大造林政策を実行。国民参加で伐採地に木を植え、各地に次々と人工林がつくられた。しかし、木材の輸入自由化に伴い国産材の需要は低下。林業は衰退し、使われないままの人工林が増えてしまった。

「人工林に求められるのは、適切に人が関わっていくことです。環境破壊につながるので“木を切ってはいけない”というイメージがあるかもしれませんが、人工林は人が手を入れた自然。にもかかわらず、人が手を離してしまうと、その森は放置林になってしまう。単一種の木々が密集する土地では、生物多様性は育まれにくいのです」

人工林に手を入れ、森林資源を上手に活用することは、世の中に溢れた石油由来製品を見直すことにもつながる。安価であることから私たちの生活に急速に浸透したプラスチック製品だが、原料の石油は地底で数千万~億年かけてつくられる資源。使い捨てすると焼却時に大量のCO2が排出される。一方、木材は育つまでに数十年かかるが、石油に比べれば圧倒的に早く回復し、成長過程でCO2も吸収してくれる。

「かつて、私たち人間の営みはもっと森の近くにありました。森から水や空気、食料を受け取り、住まいを建て、文明を築いていった。世界は森から多様な恵みを受け取りながら回っていたのです」

赤池さんは、かつての森の記憶は現代人のDNAにも刻まれているはず、と言う。

「森林浴という言葉は日本が発祥。日本人が森の近くで生きてきたことの表れです。都市生活では、虫や湿気は敬遠されがちですが、森に身を置けば感覚が変わる。工業化された社会に自分を適応させるのではなく、森に足を運び、私たちもまた自然の一部である感覚を取り戻して欲しいのです。森と人のよい繋がりの中に、脱炭素社会へのヒントがきっと見つかるはずです」

日本は国土の7割が森林

日本の森林面積は2504万ha。国土の7割を占め、先進国の中では、フィンランド、スウェーデンに続いて森林率が高い。うち人工林は1020万haで森林全体の4割。ほとんどが戦後に造林され、成長の早い針葉樹がまとまって植えられている。

日本の木材自給率はわずか4割しかない

日本の木材自給率は41.8%(2020年)。輸入木材の価格高騰などで、過去最低の18.8%(2002年)からは増加傾向にあるが、まだ十分とは言えない。バイオマス発電の燃料としての需要が伸びているが、木造建築など製材としての利用増も期待される。

人工林を活用し、伐採地には植樹を

戦後にできた人工林の木々はおよそ樹齢65年。本来なら伐採に適した時期を迎えているが、国産材の需要が少ないことなどから、日本全国に放置された人工林が存在する。伐採して木材を利用し、植樹をして再び森を育てることで、持続可能な人工林を保てる。

赤池円(あかいけ・まどか)
クリエイティブディレクター。私の森.jp編集長。NPO法人森づくりフォーラム理事。企業サイトの制作・運営を通して、主に環境・地域・教育分野の情報発信を支援。https://watashinomori.jp


●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点(2022年10月)のものです。
Photo:Yoichi Onoda Illustration:Asami Hattori Text & Edit:Yuka Uchida