2022.10.03
# ライフ # 生き方 # 人間関係

鴻上尚史「複雑化する日本のクレームに対応するには“不寛容車両”しかない」

世間ってなんだ(4)
多くの書籍を通じて、日本社会の特徴ともいえる「空気」と「世間」について、さまざまな角度から考えてきた鴻上さん。
30年にわたる連載をもとに刊行した『世間ってなんだ』では、ずっと中途半端に壊れ続ける世間が私たちの生活、心に何をもたらしてきたのか、世間が息苦しいと感じたときに、そこから抜け出す方法を語っている。

クレームに弱い日本

大阪に仕事に行って、帰りの新幹線の中で、たこ焼きと肉まんを食べるのが至福の時間でした。

それが2017年夏、いきなり、新大阪駅改札内で販売されている「たこ家道頓堀くくる」のパッケージに、「新幹線車内および駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います。空き容器は店内のくずもの入れにお捨て願います」という注意書きシールが貼られました。

Photo by GettyImages

最初、このシールを見た時は凍りました。新幹線の中でたこ焼きの臭いがするのがダメなのかなあ、しょうがないなあ、と駅のホームで出発前までの短い時間に必死であふあふしながら頬張りました。口の中を若干火傷しながら、もう一度シールを見ると、「駅構内でのお召し上がりはご遠慮願います」と書かれていることに、あらためて気付きました。ということは、ホームでもダメじゃんとひりひりする口で気付きました。

でも、車内で隣の人が文句を言うのはまだ分かるけど、屋外のホームのベンチで食べるのがどうしていけないのと、臭いは風と共に消えていくよと、猛烈に悲しい気持ちになりました。

そもそも、買って食べないままずっと車内に置いておくと、臭いが長時間にわたってずっと出続けないかと心配になりました。

ネットの記事によれば、それは「くくる」さんの決断ではなく、JR東海からの要請だそうです。

で、JR東海さんの言い分は、もうこれは当然ながら、「車内でたこ焼きを食わすな。禁止しろ!」という臭いに対するクレームの電話があったからだということだそうです。

昔は、新幹線の中で「たこ焼き」が売られていました。1980年代です。けれど、今、新幹線の中ではたこ焼きは食べられません。

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