天国へ旅立ってから今年で30年の時が経つ、「若者のカリスマ」と呼ばれたシンガーソングライター尾崎豊さん。妻の尾崎繁美さんが、長年心に留め封印してきた豊さんへの想いや心に秘めてきた想いを語る連載6回目。

前編では、一時活動休止からNY滞在、帰国した豊さんとの関係についてお伝えしました。他の女性との関係を清算し、ふたりはステディな関係へと前進。後編では、やっと迎えた安らぎと幸せの日々の中、全国ツアー中に思わぬ出来事が勃発……! そこまでの出来事をお話いただきました。

以下より繁美さんのお話です。

 

初めて観た尾崎豊のコンサートは……

1987年の7月から『TREES LINING A STREET』ツアーが始まり、私は豊にチケットを取ってもらい、妹と一緒に横須賀市文化会館に行きました。

「今日のコンサートの1曲目は、おまえの好きな曲で始めるよ。いつもは違うんだけどね」と豊は言っていたなと、その言葉を思い出しながら初めて観るコンサートに胸を躍らせていました。豊はカリスマ的なスターだけがもつ鮮烈なオーラを身にまとい、ほとばしるエネルギーというか、熱量がすごくて光の矢を放っているようでした。

ファンにとってはNYから帰国後の待ちに待ったコンサートでもあり、会場にいる誰もが尾崎豊と一体になろうと熱狂していて、私も豊の叫びに吸い込まれて魂が震えました。今朝一緒に目覚めて、朝ごはんを食べた「尾崎くん」の姿が幻のように思えていました。

つき合いはじめてわかったのは、彼の周りにはいつも風が吹いていること。アーティストとしての風、私の恋人としての風、21歳の男性としての風……それがさまざまな場面で一瞬にして変化する。ふたりでいるときには恋人の風が吹いていても、街でファンに出会ったりすると、さっとアーティストの風に一変しているのがわかるのです。そういうときには彼との間に見えない壁のようなものを感じるのですが、彼とつき合うのは「そういう気配を感じること」と理解していました。

1987年秋、日光に小旅行したときに繁美さんが撮影した豊さん。写真提供/尾崎繫美