100年以上前の「発禁小説」に見る、「性」の大転換

「性」の近代日本誌(4)

「性≠sex」だった時代

これまでのこのエッセイでは、1875年、明治8年に翻訳出版された『造化機論』に焦点を当てました。『造化機論』だけでなく、その英語版原典(The Book of Nature)や庶民向けバージョンの『通俗造化機論』とも比較して、そこから見えることを簡単にまとめました。

その中で、「性=sex」という等式が成り立っていなかった、「性≠sex」だった、という点が特に大事である、と私は考えています。

1875年時点では、「性」という漢字は、セックス的な現象を表すためには使われていなかったのです。

『造化機論』表紙

『造化機論』や『通俗造化機論』については、当時の欧米の「科学」的な「性」理解の日本への移植、オナニー病理論/病原論の導入などが重要とされてきました。このことは、いわゆる造化機論系の出版物の一般的特色であるとも捉えられています。

それはその通りなのです。間違いないことと思います。

ですが、ちょっと視点をずらしてみてはどうでしょうか。

『造化機論』などが語る欧米由来の「性」認識・「性」知識は、「性」という漢字を、セックス/sexを意味する記号としては、使わずに書かれていたのです。

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