2022.10.11

多くの人が抱える「不安」、その正体とは?
不安神経症とスキゾフレニアとパニック障害

「不安」とは何か? サリヴァンは、その感情を説明するとき、「恐怖」を引き合いにだす。この「不安」と「恐怖」は、体感するにあたって大きな違いは見られないように思える。しかし、つぶさに観察すると、その違いは明らかになってくる。目に見えない「不安」の正体に迫る!

アメリカ精神医学の源流と呼ばれたハリー・スタック・サリヴァン(1892~1949)は、「個性とは幻想である」と唱え、個人よりもむしろ「人間集団に対しての精神医学」を提唱した。

当時あまりにもラディカルなこの考え方に、「危険思想」というレッテルを貼る者も現れた。しかし、時代を経たいま、再びサリヴァンのこの考え方が新しい。
(※本稿はハリー・スタック・サリヴァン『個性という幻想』(阿部大樹訳)を一部再編集の上、紹介しています)

サリヴァンの苦闘の歴史

《訳者ノート》
精神医学はその始まりから現代まで、いつもスキゾフレニア(統合失調症)を中心にしてきた。

つまりスキゾフレニアを治療しようとするなかで〈これまでスキゾフレニアと考えられていたが、そうではないらしい病像〉を一つずつ単離していくことで体系を精緻化してきた。

以降のテキストの冒頭に挙げられている男性患者は、現在からみれば、スキゾフレニアではなくパニック障害とされるだろう。
ただ精神薬理学の勃興によってこれが独立した疾患であると「発見」されるのは、この講演のおよそ一五年後である。

以降のテキストでは、精神医学に薬理学が合流する直前を生きた一精神科医の苦闘を読み取ることができる。

突然発作に襲われた男性の運命は?

二五年も前のことです。

シェパード・アンド・イノック・プラット病院である男性患者をみる機会がありました。
普段はごく穏やかに過ごしているのですけれども、時折、強烈な不安発作に襲われるのです。
既婚者で、妻はかなり居丈高な女性でしたが、それ以外に生活上の目立った困難はありません。

症状に直結しそうなデータは、直近のものも遠い過去のものも入手不可能でした。
発作直後に面接をしても大した情報は出てきません。

発作の一つひとつは極めて重く、「内容[コンテンツ]」は今まさに死ぬような恐怖であり、身体は声を発することもできない程になってしまいます。

表面上は潜在性スキゾフレニアの恐慌状態とよく似ていました。
発作の直前に何を考えていたかまったく思い出せないと言うので、その通りなんだろうと思います。

他の患者とカード遊びをしていて発作を起こしたこともありました、そのとき私が病棟にいたことを彼は知らないはずです、その機会を捉えて相当に突っ込んだ探索をしてみましたが、やはりなしのつぶてでした。

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