2022年5月に経済産業省が発表した「未来人材ビジョン」のデータによると、18歳未満で「将来の夢を持っている」と答えた子どもが日本は60%しかいなかった。他国は80~90%を超えている。なぜ日本の子どもたちは夢を持てないのだろうか。
長く教育の現場やスポーツの現場を取材してきたジャーナリストの島沢優子さんが、具体例を踏まえて分析する。

島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」これまでの記事はこちら
 

40%の子どもたちが「夢を持てない」

前回記事『ハイジの悔し涙に滲む「韓国に抜かれた理由」社会人になると勉強しない日本人』で、日本の社会人が他国に比べて「社外学習・自己啓発を行っていない人」の割合が46%と高いことに基づいて考察した。勉強していない社会人がわずか2%しかいないベトナムを筆頭に他国は軒並み低かった。つまり、他国では多くの社会人が「学び続けている」のだ。

もうひとつ、18歳未満で「将来の夢を持っている」と答えた日本の子どもは60%しかいなかったと伝えた。日本では子どもの40%が夢を持てない。実は由々しきことではないか。他国は80~90%超である。

経済産業省「未来人材ビジョン」より

夢を持てない40%の子どもと、学校を卒業すると勉強しなくなる46%の大人。2つの数字は影法師のように重なり合う。子どもが夢を持てないのも、社会人になると学ばなくなるのも、何かを「やってみよう」と挑戦するエネルギーをどこかで摘み取られているからではないか。

このことを、ある中学校で講演した際に痛感した。
数年前、卒業を控えた中学3年生とその保護者に向け、自ら考える力、主体的に動くことの重要性を、有名アスリートらを取材した話などをもとに伝えた。ずっと取材してきたブラック部活の話も織り交ぜた。それは校長先生からの事前リクエストでもあった。

講演後の質疑応答のなかに「失敗すると周囲からいろいろ言われるし、自分が未熟だと落ち込む。立ち直るにはどうしたらいいか?」というものがあった。丸刈りで野球部員だという男子からだった。私が、人は皆失敗して成長する、未熟だということはその分伸びしろがたくさんあるなどと説明したら「じゃあ、未熟って悪いことじゃないですね」と笑顔で言った。私が「そうだよ。未熟万歳だよ」と両腕を挙げると、その子も万歳をしてくれた。会場がドッと沸いた。

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