コロナ禍を機にマッチングアプリで出会い、結婚する人は増えた。国立社会保障・人口問題研究所の『第16回出生動向基本調査 結果の概要』(2022)を見ると、2018年後半から2021年前半に結婚した夫婦の13.6%が「SNSやマッチングアプリといったインターネットサービスを利用して知り合った」ことがわかる。
また、コロナ禍でもう一つ増えたことがある。DVの相談件数だ。内閣府男女共同参画局の「配偶者からの暴力被害者支援情報」によると、2019年から2020年にかけてのDVの相談件数は11万9276件から18万2188件と、およそ1.5倍に増加しているのだ。

マッチングアプリでそこまで知らないままに結婚し、よいところを新たに知っていければ幸せだ。しかし、結婚して暴力にさらされてしまった場合はどうしたらいいのだろうか。

キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「マッチングアプリで結婚した夫婦の調査依頼は激増しています。これは、お互いの背景をよく知らないまま結婚してしまうので“こんなはずではなかった”という思いから調査が始まることは多いです」と語る。彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。
今回山村さんのところに相談にきたのは、マッチングアプリで知り合い、2ヵ月で結婚してから8年たつ42歳の女性。
この連載は、調査だけでなく、調査後の依頼者のケアまで行う山村氏が見た、現代家族の肖像でもある。

山村佳子
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリングを持女性探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
山村佳子さん連載「探偵が見た家族の肖像」これまでの記事はこちら
 

相手にあわせすぎて振られてきた女性

今回の依頼者は、派遣社員をしている沙織さん(仮名・42歳)。8年前にマッチングアプリで知り合って、2ヵ月で入籍した夫(45歳)と離婚に有利な条件を押さえるために、私たちに相談に来ました。

沙織さんは、清楚な雰囲気と整った顔立ちをしています。聡明で仕事がデキそうな女性のオーラを漂わせており、私たちも最初は緊張しながら、カウンセリングをスタート。
まず、夫婦の出会いのきっかけについて伺いました。

「結婚したくてどうにもならないときに、立て続けに婚約破棄に遭ったことがあったんです。3人くらい男性から断られてしまって。なんか、私っていろいろダメみたいなんですよ。“俺に話を合わせすぎてムカつく”とか“ウソ笑いをするな”とかしょっちゅう言われていました。それでマッチングアプリに登録したんです。当時はアヤしいと思いながらだったんですけど、そこで主人に出会って、向こうからグイグイ来て、結婚したんです」

自信をなくしたときにマッチングアプリでプッシュしてくる夫に出会った Photo by iStock

聞くと、夫は沙織さんに一目ボレで猛アプローチをした。高級ブランドのバッグをプレゼントしたり、海外旅行に連れて行ったり、沙織さんの両親までハワイに招待したそう。夫は外資系のコンサル会社に勤務しつつ、自分で会社を2つ経営しており、お金はふんだんにあるそう。

「私は収入がある人じゃないと絶対に結婚したくなかったんです。それに、持ち家がある人がよかった。やはり、家くらい持っている男じゃないと結婚したくないんです。容姿も重要で、顔がキレイじゃないと絶対にダメ。お腹も出ているような人もお断りです。そして学歴も重視していました。主人は有名私大卒なので、最初に会ったときは、“マッチングアプリにこんな掘り出し物がいるの?”と思いましたし、主人に押されるままに結婚したんです」