「どんな状況でも、どんな状態でも、誰も排除しない、されない社会で暮らしたい」
これは、俳優でタレントの東ちづるさんが代表をつとめる『一般社団法人Get in touch』が掲げるスローガンだ。

芸能界で「支援」や「人権」という言葉を発言すると、「そういう発言をするな」と言われた30年前、東さんは白血病の骨髄バンクの支援をはじめた。多くの逆境の中、さまざまな支援活動を続けてきた東さん。10月6日の『世界脳性まひの日』には自身の『Get in touch』で日本初の『世界脳性まひの日〜Warm Green Day 〜』のイベントを開催する。

今回は、そんな活動を続ける東さんと新生児科医の今西洋介医師が社会活動と脳性まひの現状について対談を行い、今西医師自らが寄稿。東さんの「社会活動への想い」と「脳性まひ」に対する活動について前後編で寄稿していただいた。後編では、意外と知らない「脳性まひ」の現状と10月6日のイベントについてお伝えする。

撮影/市谷明美

以下、今西洋介医師の寄稿です。
(以下名称省略)

 

意外と知られていない「脳性まひ」のこと

――今回、10月6日の『脳性まひの日』に合わせ、「脳性まひをまず知ってもらおう」と活動を始められましたね。こちらはどういうきっかけだったのですか?

:以前、自閉症の啓発デーにイベントをしていたときに、いっしょに活動した脳性まひの方が「自閉症はいいなあ。こんなにも知られて……。脳性まひの日もあるのになぁ」とボソっとつぶやかれたんですね。すぐに調べ『世界脳性まひデー』の存在を知ったのです。

さらに、「脳性まひ」について調べると、症状の幅がとても広いことに驚きました。今までダウン症や自閉症、聴こえない、見えない、LGBTQなどの様々な特性のあるマイノリティの方々と活動はしていたのですが、「脳性まひ」のご本人や家族の会と知り合うことがなくて、色々リサーチしても内情がなかなか把握できませんでした。私たちでたどり着けたのは『かるがもCPキッズ』さんや『サードプレイス』さんという家族会だけでした。

――そうなんですよね、「脳性まひ」という言葉は知っていても、どういう状態なのか、どういう疾患なのか理解されている方は少ないと思います。脳性まひは、「妊娠中から生後4週間までの間に生じた脳の損傷で、脳機能に不具合が生じ、体が不自由になる後遺症のこと」をいいます。ですが、原因はさまざまです。

ちょっと専門的な内容になりますが、妊娠中の感染や胎内環境の悪さなど出生前の要因、常位胎盤早期剥離(妊娠中に胎盤が剥がれ母子ともに命の危険に晒される病気)や臍帯断裂(臍の緒がちぎれる病気)など出生時の要因、それに頭の出血、脳室周囲白質軟化症(虚血が原因)など新生児期の要因……、原因はひとつではありません。

さらに、原因だけでなく重症度もバラバラで、症状も非常に多彩です。各自困っている症状が異なるので、家族会も症状で選んで入会される方が多いようです。例えば、脳性まひでもてんかんで困っている方はてんかんの家族会、嚥下障害で困っている方は嚥下障害の会など、という感じになります。ダウン症や自閉症などと違って脳性まひの家族会が少ないのはそういった背景もあるのかもしれませんね。

撮影/市谷明美

:本当にそういった多様な症状があることを知りませんでした。でも、色んな活動してきて思うのはやっぱり「知らないことは怖い」です。知らないことで人を傷つけてしまうことだってあります。脳性まひのことにしても、勝手な先入観や思い込みを作ってしまうこともあります

私が代表をつとめる『Get in touch』では、障がい、病気、性別、国籍といった違いに囚われず誰も排除しない「まぜこぜの世界」を作りたいと思っています。そのためには「知らない」から「もっと知りたい」が大切だと思っています。そういった意味も含めて、10月6日の『脳性まひの日』のイベントのキャッチコピーを「私たちは知らなさ過ぎる」にしました