「いい道具は、料理をらくにしてくれます。そして楽しくしてくれます。しなくては…ではなく、したいと思わせてくれる力があります」
キッチン道具を作る仕事もしている有元葉子さんが、20年前に刊行した著書『有元葉子の道具選び』(幻冬舎)の中で語った言葉だ。

よい台所道具は手に取りやすく、気持ちよく使える。物事が滞りなく進むのは気持ちがよいから、料理が楽しくなる。それが道具本来のあり方だと有元さんはいう。ではどのような思いで台所道具を選んでいるのか。市販で購入したもの、どうしてもなくてオリジナルで作ったもの。どちらについても伺った。

 

白磁の蓋つき鉢の中身は

たとえば有元さんがぬか床を入れているのは、おひつぐらいの大きさの白磁の蓋つき鉢だ。見たことのない形だったので、どこで手に入れたのですかと聞くと、
「オリジナルです。親交のある高久敏士さんという作家さんが作ってくださった」という。
高久さんとは何度かのやりとり、きゅうりがまっすぐ入るサイズで冷蔵庫にも入れやすいようにとか、「溜まり」やすい角はなくしたいなど、の末に完成したという。知人だからと好意に甘えることはなく、求めている形と違えば知人でも妥協せずに伝える。
こんなところにも有元さんらしい生き方があらわれる。

きゅうりがまっすぐ1本入る容量があり、かき混ぜるのもらくちんな、オリジナルのぬか床鉢。写真撮影:有元葉子