見えづらい社会の問題をテーマに、作家の小林エリカさんがゲストと対話し、世界を変えるヒントを探る連載。初回は、認定NPO法人REALs(Reach Alternatives)理事長の瀬谷ルミ子さんと、ウクライナ危機に直面した今、改めて考えたい紛争と平和のことをお話ししました。

小林エリカ(こばやし・えりか)
1978年東京都生まれ。作家・漫画家。目には見えないもの、歴史、家族の記憶などから着想を得て、丹念なリサーチに基づく史実とフィクションからなる小説や漫画、インスタレーションなど、幅広い表現活動を行う。著書にシャーロック・ホームズと父の生死をめぐる小説『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)、絵本『わたしは しなない おんなのこ』などがある。

瀬谷ルミ子(せや・るみこ)
1977年群馬県生まれ。認定NPO法人REALs(Reach Alternatives)理事長。中央大学総合政策学部卒業後、イギリス・ブラッドフォード大学紛争解決学修士過程修了。国連PKO、外務省、NGO職員として紛争地で活動する。2013年より現職。紛争地の復興、治安改善、兵士の武装解除、女性を平和の担い手として育成する活動などを行う。著書に『職業は武装解除』(朝日新聞出版)。

 

祈るだけでは変えられない。
コツコツ築く、私たちの平和

瀬谷ルミ子さんはイギリス・ブラッドフォード大学で紛争解決学を学び、国連や外務省、NGOの職員としてソマリアやアフガニスタンなどで兵士の武装解除や治安改善、平和構築などの事業に携わってきた“平和を築く”専門家。小林エリカさんが今抱く疑問を投げかけ、紛争と平和について考えた。

小林 お目にかかるのは6年ぶりでしょうか。瀬谷さんが理事長を務める認定NPO法人〈REALs〉から届くニュースレターを読んで、変わらず紛争地で平和のために尽力されている姿に深い感銘を受けています。

瀬谷 毎月寄付をいただいて、ありがとうございます。エリカさんのお名前を見つけるたびに心強く、励みになっています。

小林 今、気になることは様々あるのですけれど、アフガニスタンからの米軍撤退後のことやロシアによるウクライナ侵攻のこともあって、真っ先に瀬谷さんのことが浮かんだんです。それぞれのニュースはすごくショックでしたが、日常に追われる中で私は直接何もできないことがもどかしい。しかも今なお続いていることなのに、まるで遠いことみたいになってしまうことも悔しいです。

瀬谷 アフガニスタンのことは米軍撤退時には大きく報道されましたが、その後はほとんど報じられません。でもタリバンの支配下で、今も多くの命が危険に晒されています。

小林 瀬谷さんは昨年8月のカブール陥落以降、タリバンから命を狙われる人々の国外退避や保護の支援を続けていらっしゃいます。今、現地の様子はどうなっているのですか?

瀬谷 前政権の職員やジャーナリスト、欧米との結びつきが深かった人は投獄、殺害される場合もあります。彼らは隠れ家を転々としていて、子どもたちも学校に行けていません。あとは女性ですよね。タリバンの支配下では教育や就労など女性の権利が制限されているので非常に厳しい状況にあります。

小林 日本でも退避するアフガニスタンの方を受け入れているんでしょうか?

瀬谷 〈REALs〉では、これまで219名(6月6日時点)を国外退避させましたが、そのうち日本での受け入れは38名です。ご存知の通り、日本では難民の受け入れがほとんど行われていません。日本との関わりにより命を狙われている人でも、日本への退避にはフルタイムの仕事を見つけるか留学するかして在留資格を得る必要があるんです。