コロナ禍で社会問題になっているのは、性感染症の「梅毒」の感染拡大だ。2022年9月、国立感染症研究所により7月までの感染者数の速報値が発表された。それによると、梅毒の感染者数は全国6106人で、これは去年の同じ時期の1.7倍だ。都道府県別のデータもあり、最も多い東京都では1796人で去年の同じ時期の1.5倍。大阪府は773人で2.1倍にもなっていた。

キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さんは「身に覚えがない性病でパートナーどちらかの浮気を確信する依頼者は多いです。家庭に性病が入り込むのは、どちらかが別の誰かと浮気をしているからです」と語る。
そして「コロナ禍でインフルエンザなどの感染者が減っているが、梅毒が増えているのは、マッチングアプリやSNSなどを通じた不特定多数との性交渉の増加が考えられます」と続けた。

彼女は浮気調査に定評がある「リッツ横浜探偵社」の代表だ。
今回山村さんのところに相談にきたのは、中学の同級生同士で結婚し、10年になる37歳の男性。この連載は、調査だけでなく、調査後の依頼者のケアまで行う山村氏が見た、現代家族の肖像でもある。

山村佳子
私立探偵、夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定 メンタル心理アドバイザー JADP認定 夫婦カウンセラー。神奈川県横浜市で生まれ育つ。フェリス女学院大学在学中から、探偵の仕事を開始。卒業後は化粧品メーカーなどに勤務。2013年に5年間の修行を経て、リッツ横浜探偵社を設立。豊富な調査とカウンセリングを持女性探偵として注目を集める。テレビやWEB連載など様々なメディアで活躍している。
リッツ横浜探偵社:https://ritztantei.com/
山村佳子さん連載「探偵が見た家族の肖像」これまでの記事はこちら
 

この人の妻は浮気してほしくない

今回の依頼者は、東京都内の学校で教師をしている光雄さん(仮名・37歳)。23区内の郊外で生まれ育ち、公立小中学校、都立高校、国立大学と進学しています。短い髪に白いシャツに黒いパンツと、「いかにも教師」という外見をしています。
優しく温かい性格であることと、妻を心から愛していることが伝わってきました。光男さんは「一切の浮気をしていません」と断言しているのに、性感染症に感染しているということは、妻が浮気をしている。
妻の浮気がほぼ確定したうえでの調査になるのですが、カウンセリングの間にも「この人の妻は浮気してほしくないな」という気持ちが芽生えるほど、まっすぐな方でした。

「妻とは中学校の同級生なのです。僕は目立つタイプで生徒会などをやっていました。スポーツもできたので、女の子からは人気があったと思います。でも、女の子が怖いというか、ちょっと何を考えているかわからないところがあるので、勉強と剣道に打ち込んでいました」

妻は全く目立たないタイプだったといいます。
「勉強もスポーツも普通で、“あ~いたな”という感じの人です。27歳のときの同窓会で再会した時には、すっかり美しい大人の女性になっていた。クラスの男たちが色めき立つほどだったんです」

妻は中学生のときは「ああ、いたな」という程度だったのだが…Photo by iStock