「おまえのセックス、ホントつまんねえ」
恋人からそんな風に言われたら、あなたはどう思うでしょうか。
過去に恋人からこういわれるところから始まるマンガがikoさんによる『カラダ、重ねて、重なって』(Palcy)。2021年1月に連載が始まるや、「私の悩みがここにある」「いいにくいセックスの悩みをユーモア込めて描いてくれて嬉しい」「共感する」と応援の声が集まり、既刊は電子書店でランキング1位を獲得するなど話題の作品です。
主人公の岡本みすずは、29歳にして仕事はできるが人をシャットアウトしてしまう癖がある「無表情で怖い人」と評判の女性。
実は24歳のときにつき合っていた彼に「おまえのセックス、ホントつまんねえ」と言われ、直後に振られてからそのショックから立ち直れずにいました。お付き合いするとついてくる夜の呪いにかかって「私はきっと今後も男性とお付き合いすることがないだろう」と確信していたのです。しかし、同じように過去の恋愛のトラウマを抱える御影さんという男性と互いに心惹かれたことで、不器用なコミュニケーションが始まっていきます……。
みすずや御影さんは、漫画の世界の特異なキャラではありません。パートナーからの言葉に傷つき、恋人を作ることが怖くなってしまうことは多くありますが、特に性についての話は繊細だからこそ、より難しいのではないでしょうか。
そこで、5巻の発売を記念して、2021年4月に結婚したバービーさんとつーたんさんのご夫妻にこの漫画を読んでいただき、「セックスとコミュニケーション」について意見をお聞きすることにしました。さらに、結婚当時、つーたんさんは芸能人ではないにも関わらず、見事なウェディングフォトを公開していたお二人に、今回は「深夜の密会」をテーマに撮影にも挑んでいただきました。
おふたりのなれそめについては、つーたんさんの人気連載「僕の妻は“女”芸人」に詳しく、毎回「少女漫画より少女漫画のよう!」「いい夫婦!」「感動した!」という声が多く寄せられています。バービーさん連載「本音の置き場所」からも、つーたんさんの連載からも、お互いを思いやりながら自然でいられるバランスの素晴らしい関係性が伺えます。しかし実はなんどもすれ違いがあり、「別れよう」となったことも1回ではないというのです。
対談前編では、おふたりのなれそめと、「本音で話せるようになるまで」をお聞きしていきます。

出会った当初は、つーたんの本音が見えなかった
バービー 今日のヘアメイクのイメージはアンリちゃんです! 私は自分で、自身のセックスにコンプレックスがあり、恋愛に消極的なみすずちゃんではなく、言いたい事を言い、性的にも奔放なアンリちゃんだと思ったので、こんなふうにしてもらいました。

つーたん 僕も御影さん風にスタイリングしていただきました。普段こんなオシャレな格好はしないので、ワクワクしています。
バービー 嬉しいね~! たくさん素敵な写真を撮ってもらって!
つーたん 僕は今回『カラダ、重ねて、重なって』を読んで、すごく御影さんに共感したんです。彼は過去に人間関係で傷ついたことがあって、同じ状況にならないよう予防線を張りながら、恋愛したり友達づきあいしたりしている。現実にありえることだし、御影さんがそういう部分を気にしながらも前向きに生きてる感じがすごくリアルだなと思いました。性格が穏やかすぎて、周囲からは「菩薩」と呼ばれてるけど(笑)。

バービー 私も御影さんの思考回路や気遣いが、つーたんに似てるなと思って読んでました。みすずと御影さんって会社の同僚だから、プライベートで本音で話し合う場面でもいい意味でビジネスライクじゃない? 伝え方とか。そのへんはすごく私たちに近いし、そういう空気感を作ってくれたのはつーたんだから、そういう意味でも似てるなって。
つーたん かーたん(バービーさんの呼び名)と出会ったばかりの頃、僕としては本音で喋っていたつもりなんだけど、かーたんは「つーたんは本音を言ってない」って言ってたでしょう? そのあたりもすごく重なった。
バービー 私は特に重ならなかったけど(笑)。要は、最初の頃のつーたんがつまらなく感じちゃったのよ。私が話しかけても想定範囲内の優等生の答えしか返ってこなくて、会話が全然広がらない。
つーたん グサッ!(笑)
バービー こっちが努力して盛り上げているのに、営業トーク的な回答しか返ってこなくて。真面目すぎたのね。しかも「ワタシはこの姿勢を崩しませんよ!」というガードも見えて。かっこつけてるな~、と思っちゃった。
つーたん 僕はかーたんが言っている意味がわからず、「自分が求める言葉や態度が返ってこない=本音じゃない」という認識になる人なのかなって思ってたんだよね。でも話してみるとそうでもなくて、そのうち「私にはありのままを見せてよ」「もっと自分の言葉で喋ってよ」という意味なのかなと思うようになった。
