2021年4月に結婚したバービーさんの夫・つーたんさんによる連載「僕の妻は”女”芸人」。インスタのDMを機に飲みに行き、デートを重ねるようになってフラれながらも告白、そして交際がスタート。その経緯とバービーさんとのやりとりを率直に伝えてくれています。連載第9回では、同棲をスタートさせた頃に、バービーさんの北海道の実家へ挨拶へ行ったときのエピソードを綴っていただきました。緊張しながらもバービーさんのお父さんとお母さんに初めて会ったつーたんさんが、家族について考えたことをお伝えします。

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交際と同棲の報告を兼ねてご挨拶へ

僕が、彼女の生まれ育った町・北海道夕張郡栗山町へ初めて出向いたのは、同棲を始めた頃。交際と同棲、ダブルの報告を兼ねて彼女と一緒にお邪魔した。

 

彼女のご両親に挨拶をすることへの緊張感もさることながら、彼女が生まれ育ったふるさとの地を踏めることがこの上なく嬉しかった。

羽田空港から飛行機に乗り、離陸する前に夢の中へ。いつでもどこでも瞬時に寝られるのは、僕らの貴重な共通点の一つである。浅い眠りから深い眠りへと切り替わろうとする頃にちょうど着陸した。レンタカーをピックし、車を走らせ空港の風景を抜けるとなんとも心地よい道のりがどこまでも続く。

運転席の窓を半分ほど開け、車内に流れ込む新鮮な空気をそのまま肺に流し込んでみた。澄み切った空気がなんともおいしい。肺年齢が一気に若返ったような気さえしてくる。ここぞとばかりに何度も何度も贅沢に深呼吸をする。牛の大群や麦わらロールに見送られながら車を走らせてゆく。

初めてかーたんの実家に一緒に行った日。これからいざご挨拶!の前に記念撮影。写真提供/つーたん

「見えてきたよ!」

新千歳空港から40分ほどで到着。アクセス抜群だ。心の準備もしきれないほど、体感的には思っていたよりも早い到着だった。車を停め、彼女の2歩後ろを歩き、立派な玄関へと向かう。僕は落ち着いた表情を装っていたが、本当は緊張していた

「ただいまー!」

「……お邪魔します!」

彼女のよく通る声にかき消されないように、あえて2拍ほどあけてみた。

「はじめまして。つーたん(本名)と申します」

「お付き合いしている彼です。つーたんと同棲を始めるんだ」

彼女が同棲の報告まで含め、端的に紹介してくれた。ご両親はとても優しく温かな表情で受け入れ、出迎えてくれた。お母さんの明るい笑顔、お父さんの堂々とした佇まいは、それぞれがしっかりと彼女に遺伝している

そしてどこからともなく、懐かしさをおぼえる和やかな香りが漂ってくる。

カレーだ。

お母さんが、家庭菜園で採れた何種類もの野菜がたっぷり入った手作りカレーを用意してくれていたのだ。

「こういう時って桶に入ったお寿司とかが出てくるのかと思ってた! カレーってなかなか珍しいよね(笑)」彼女はそう言って長いこと笑っていた。

お言葉に甘えて早速いただく。今季の自信作であるという人参、玉ねぎ、じゃがいも、ヤングコーンなどの野菜がごろごろ入ったカレーは、優しさに溢れていてとても美味しかった。すっかり緊張がほぐれ、おかわりまでいただいてしまう。

「これは全部自分たちで作った物だから」

散々笑っていた娘を諭すように、食べ終わる頃にお母さんがそう呟いた。彼女が生まれ育った地の栄養を蓄え、ご両親が愛情たっぷりに育てた彩り豊かな野菜たち。それをいただけるなんてとても幸せだ。

そして、彼女が笑って話していたような、寿司桶などが用意されていたら……僕は余計緊張してしまったはず。今思えば、これはお母さんの優しさ作戦だったのかもしれない。お母さん、すごい。

北海道で気球にも乗りました。写真提供/つーたん