ドイツのガス代高騰救済策「2000億ユーロ投入」がEU各国の猛反発で撃沈寸前

厳しい冬はすぐそこに迫っている

ガス・電気の市場価格は去年の10倍超

先日、「ドイツの政治家が国民に政策を説明するとき、しばしば子供言葉を使うのは何事か!」という批判がとあるニュースサイトに出ていたが、私も最近それと同じことを思い、不快に感じていた。

例えばワクチンのことは「チクリ(Piks)」、コロナの時の援助は「ドカン(Wumms)」。ドカンとは大規模な援助という意味だ。そして、今回発表されたガスと電気の価格抑制を目的とした大型援助が「ダブル・ドカン(Doppelwumms)」。はっきり言って、不快感もダブルだ。

政治家は、子供言葉にすれば同じ目線になって賛同を得られるとでも思っているのだろうか。国民をバカにしているのか、それとも国民が本当にだんだんバカになっているのか?

Gettyimages

9月29日、その「ダブル・ドカン」の詳細が、ショルツ首相(コロナ陽性のためオンラインで参加)、ハーベック経済・気候保護相、リントナー財務相によって紹介された。企業と家庭に対する支援策の規模は、破格の2000億ユーロ(約28兆円)。ウクライナのGDPとほぼ同じだ。支援の主目的は、ガス料金の値上げを抑えることである。

ドイツ政府はウクライナ危機が始まって以来、自国民に対して3月、5月、9月と3度にわたり、計950億ユーロ(約13.3兆円)の支援策を実行している。しかし、経済の混乱は止まらず、それどころか強烈なインフレが進行しつつある。

9月のインフレ率は前年比10%で、食料品とエネルギー部門に絞ると、それぞれ18.7%、43.9%。家計において食料品とエネルギーは節約しにくく、国民の受けている打撃は大きい。“体感”インフレ率34%というのが10月初めのアンケート調査の結果だったが、インフレは来年に向けてさらに進むという。

 

ガス、電気の市場価格はすでに去年の10倍を軽く超え、当然のことながら、ほとんどの企業が青息吐息。ドイツ経済は、これまでロシアの安いガスによって支えられてきたのだから、それが無くなれば(あるいは価格が10倍にもなれば)経済は保たない。単純な話だ。

特にガス販売会社は、市場で超高価なガスを調達し、顧客には契約通りの値段で売ったため、あっという間に経営が破綻。ドイツ最大のガス会社、ユニパー社は、22年の上半期だけで120億ユーロの欠損を出した。

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