2022.10.15

同居の娘夫婦は自宅で死んだ「84歳母親の最期」にも立ち会わず…訪問医と飼い猫“サクラ”だけが見た“母親の死”の「一部始終」

茨城県つくば市で訪問診察を続ける『ホームオン・クリニック』院長・平野国美氏は、この地で20年間、「人生の最期は自宅で迎えたい」と望む、多くの末期患者の終末医療を行ってきた。平野氏は5500人以上の患者とその家族に出会い、2500人以上の終末期に立ち会ってきた。

前編に引き続き、今回は二世帯住宅に住むある親子と家族が飼っていた猫をめぐる実例をもとに、自宅で人生の最期を迎える人たちを取り巻く、令和のリアルをリポートする――。

photo by gettyimages

二世帯住宅で同居しながら、娘夫婦との交流が断絶状態だった恵子さん(84歳・仮名)。夫も亡くし、恵子さんにも最期のときが迫るが、娘は以前として訪問医である平野氏の前に現れなかった。

「娘は私の言うことを聞いてくれなかった」

惠子さんに納得できる最期を迎えて貰うためにも、娘の性格や死生観を事前に知りたい――。

私は惠子さんに探りを入れてみた。

「娘さんって、何歳ぐらいなの?」
「いくつになったかしらね。先生と同じくらいじゃない? 五十は超えたわね。生まれたのが東京オリンピックの年だったから」

娘は私と同じ年だった。惠子さんが三十半ばの時に生まれた計算となる。結婚も当時としては遅く、三十を超えてからだった。お見合いの席で御主人が「俺が絶対に守る」と宣言してくれて、惠子さんはやっと結婚に踏み切ったそうだ。

「娘さんはどんな仕事を?」

「よくわからない。あまり話してくれないから。子供の事なんて何もわからない。本当はね、学校の先生になって欲しかったの。そしたら、娘も地元に残ってくれるし、世間体もいいじゃない。何より一緒に暮らせるしね。でも、希望通りにはならなかった。大学も行かないっていうし、変な男と結婚するし、最後まで私のいうことなんか、全然、聞いてくれなかった」

 

話を聞いてみると、母は娘に「こうあって欲しい」という希望があったが、娘には娘の価値観があり、お互い相容れない関係となり、徐々に亀裂が入っていったようだった。

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