どこからも「リスクが高い」と断られた冤罪ドラマ
――渡辺さんは以前、別のインタビューで「現在の映画やドラマは、視聴率や興行収入が見込みやすくてスポンサーもつきやすい“原作モノ”のオファーが多く、オリジナル脚本の企画はなかなか通らない」とおっしゃっていました。今回、オリジナル脚本で、しかも冤罪事件という踏み込んだ内容の企画が民放の連ドラで実現できたのはなぜなのでしょうか?
渡辺 これはもう関西テレビ(以下、カンテレ)さんのうっかりとしか言いようがないですね(笑)。実は佐野さんがTBSで最初に企画を出したときは、案の定、却下されたんですよ。こんなにハレーションを起こす、つまり波風を立てるリスクの高い脚本はできない、と。
私は「いいじゃん、やっぱりラブコメやろうよ」と言ったのですが、佐野さんが「私はもう今更あやさんとラブコメなんてやりたくないです。私がなんとか実現しますから、書いてください」と言ってくれた。そこで、8話くらいまでの脚本(当時)を先に書き上げて、佐野さんがいろんなところに掛け合ってくれたんです。ただ、それもことごとく断られてしまって。
――まさに『エルピス』の劇中で冤罪事件の報道を止められるようなことが、ドラマの企画成立過程でも起こっていたのですね。
渡辺 そうこうするうちに佐野さんがTBSを退社したり、体調を崩されたりして、これは完全に暗礁に乗り上げたな、とほぼ諦めていたんです。そしたら2〜3年のブランクをあけて、佐野さんが「カンテレがこの企画をやらせてくれそうなので、私、カンテレに入社します!」と不死鳥のように復活してきたんですよ。それで今、なんとか実現しつつあるという感じです。私は、まだなんかあるんじゃないかと半信半疑でいますが。
佐野P (リモート取材に割り込んで)さすがにもう大丈夫ですから(笑)。
渡辺 いや、わからん、わからん(笑)。
――こうしてお話を聞いていると、本当に佐野Pの粘り勝ちで実現に漕ぎ着けたという感じなんですね。
渡辺 いやあ、佐野さんの頑張りたるや、本当にすごかったと思います。
佐野P あやさんはそうおっしゃってくださいますが、オンエアがいつになるどころか、どの局で放送できるかも決まっていないのに、プロデューサーの「なんとかしますから」という言葉を信じて、全話を書き上げてくれたあやさんがすごいのだということは補足させてください。