『三体』がきっかけに…作家・熊谷達也さんは、なぜ初の本格SF『孤立宇宙』を書いたのか?

『邂逅の森』などのマタギの物語や、東日本大震災に関連する作品で知られる直木賞作家・熊谷達也さんが、初の本格SFである『孤立宇宙』を上梓した。2200年代、宇宙を舞台にした作品に、ファンからも驚きの声が上がっている。なぜSFを書こうと思ったのか、熊谷さんに理由を伺った。

SF作家になりたかった

――時を超えて宇宙に広がる壮大な物語。初の本格SFを手がけることになった経緯からお伺いしたいです。

もともと私はSF作家になりたかったんです。読書欲が旺盛だった若い頃はちょうどSF黄金期で、読書の9割方はSFでした。実はその頃、コンテストに応募したこともあるんですよ。しかしそのうちSFからは遠ざかってしまい、動物小説の『ウエンカムイの爪』でデビューしました。

今回の執筆の直接のきっかけは、コロナ禍でした。時間ができて最近のSFを読み始めるうちに、自分でも書きたくなったのです。

講談社HPより
 

――新世代のSFは話題作も多く、昨今はブームが再燃していますね。

ええ。昔好きだったのはアーサー・C・クラーク、ジェイムズ・P・ホーガン、ラリー・ニーヴンあたりのハードSFでした。現実の科学理論を踏襲し、ファンタジーに流れていない作品です。

ところが一時は現実の科学技術が急速に発達してしまい、作家の想像力が追いつかない傾向が続いていました。「現実を超える面白い設定ではもう書けないのか」と思い込んでいた私に刺激をくれたのは、日本でもベストセラーになった『三体』でした。現実の物理学を踏まえながらやれることをあの作品が示してくれました。そこから自分なりに試行を始めたんです。

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