2022.10.26
# 精密機器

最新「画像生成AI」のすごい実力から考える「人間の創造性はどうなるのか?」問題

Adobeが見据える表現者の未来とは

「AIの襲撃」

クリエイター向けのツールを多数提供する、ソフトウエア開発大手のAdobe(アドビ)が、2022年12月に創業から40年の節目を迎える。

10月18日・19日に開催された年次イベント「Adobe MAX 2022」でも、40周年からその先に向けての施策が語られた。

【写真】Adobe MAX・米国・ロサンゼルスで開催写真上:アドビは今年の末で創業40年を迎える 写真下:Adobe MAXは、3年ぶりのリアルイベントとして、米国・ロサンゼルスで開催された

そのアドビが一翼を担うクリエイティブツールの世界は現在、「AIの津波」に襲われている。アドビ自身、クリエイティブツールにAIを活用する先駆者ではあるが、大きな話題をよんでいる「文字の命令で絵を描くAI」などにどう対処していくのだろうか?

現地でAdobe MAXに参加し、同社のエグゼクティブ陣に取材した内容から考察してみよう。

アドビを支える“功労者”

「過去の投資のなかでも、特に重要であったのが『Adobe Sensei』の開発だ」

アドビのシャンタヌ・ナラヤンCEOは、Adobe MAXにおける基調講演の冒頭で、そう話した。

AIをクリエイティブのアシスタントとして活用する「Adobe Sensei」は2016年に発表されたが、投資はそれ以前から継続しておこなわれている。いまや、Adobe Senseiが関わらない新機能のほうが少ないと感じるほどだ。

【写真】アドビ・シャンタヌ・ナラヤンCEOと「Adobe Sensei」写真上:アドビのシャンタヌ・ナラヤンCEO 写真下:同社のツールの軸となる「Adobe Sensei」

「失敗写真」を「成功写真」に変換

Adobe MAXに合わせて公開されたPhotoshopの最新バージョン「2023」でも、Adobe Senseiを用いて不要な部分を削除するだけで、背景に馴染んだ画像へと自動加工してくれる「コンテンツに応じた塗りつぶし」という機能が搭載された。

次の写真は、この機能を実際に試してみた画像だが、作業時間2分ほど(掛け値なしにそれくらいだ)で、写真がすっきりとした形に変わっているのがおわかりいただけるだろう。

【写真】「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能「コンテンツに応じた塗りつぶし」機能で加工してみた。2分ほどの作業で、車内から撮影した失敗写真がきちんとした風景に

周囲「360度の画像」を自動生成

アドビが開発中の技術を「チラ見せ」する人気イベント「Sneaks」でも、Adobe Senseiを活用したプロジェクトが多数公開された。

たとえば「Project Beyond the Seen」は、3D CGで使われる「環境マップ」を簡単につくり出す技術だ。

鏡のように反射する物体を描く場合、光の反射を真剣に計算すると負荷が大きく、計算時間も長くなる。そこで、「ある物体から反射して見えるはずの周囲360度の画像」をあらかじめ用意しておき、「いかにもその物体の表面で反射したかのように見える」イメージで表示するために用いるのが「環境マップ」という画像である。

便利なものではあるのだが、周囲360度の写真・画像を用意するのもまた、大変な作業だ。

Project Beyond the Seenは、この「周囲360度の写真・画像を用意する」作業を簡便にするものだ。実際には写っていない「自身の背面や側面にあるはずのもの」をAIが描き、正面からの1枚の写真のみから、環境マップに使う360度の画像をつくり出す。

実際にでき上がった映像からつくられたCGを見ても、「鏡面の物体で、ちゃんと背景が反射しているように見える」だろう。

【写真】AIでの描画1枚しかない風景写真でも……(上)、Project Beyond the Seenを使えば、「部屋全体の360度写真」をAIが合成してくれる(中)。そこから反射する物体の映像もちゃんとリアルに生成される(下)

将来のPhotoshopでは?

アドビはさらに、将来的にはPhotoshopの中からプロンプトや画像をもとに新たな画像を生成・合成する技術を導入することも発表している。それが具体的にどのようなものになるかは、同社がブログで公開した映像を見るとわかりやすい。

アドビが将来のPhotoshopに搭載を予定している「AIからの画像生成機能」デモ(英語版)

「お絵描きAI」がもたらす不安

今年のアドビの発表では、「生成型AI(Generative AI)」という言葉を用いたものが多く見受けられた。前出の2例は、Adobe Senseiを使って「実際にはそこにない映像を、それらしく生成している」例といえる。

この連載でも以前の記事〈「お絵描きAI」Midjourneyの画力と創造性を試してみた!〉で解説したが、今春以降、文字列(プロンプト)から直接絵を生成する、俗にいう「お絵描きAI」が急速に発達している。これもまた、生成型AIの1つといえる。

アドビのツールは生成型AIを多数使っているが、一方で、お絵描きAIがクリエイターの活路に影響を与えるのではないか……という不安が出始めているのも事実だろう。

そんな不安に、アドビはどう応えるのだろうか?