2022.10.29
# 本

「つまようじから木の匂いがする」というクレームから考える「バカと無知の壁」

なぜこれほど愚かになれるのか
「つまようじから木の匂いがする」というクレームが来た、というメーカーの話が話題になった。「木材なので木の匂いが若干するのは仕方ない」旨の回答をしたところ、どうやら顧客は納得したとのことだった。

この一連のやり取りに違和感を抱いた方もいることだろう。そんな向きには、このフレーズがピンと来るかもしれない。

バカの問題は自分がバカであることに気づかないことだ」

――なかなか毒気が強い言葉だが、これはきちんとした実験から導かれた結果だと言う。

一体誰がどういう意図で行った研究なのか。筆者の新著『バカと無知―人間、この不都合な生きもの』(新潮新書)をもとに見てみよう(以下同書をもとに再構成する)。

顔にジュースを塗ったら透明になれる

1995年、アメリカのピッツバーグでのこと。

男が白昼堂々、変装もせずに銀行に押し入った。監視カメラの映像をもとに男はあっと言う間に逮捕される。警察でビデオテープを見せられた男は、こうつぶやいた

だって俺はジュースをつけていたのに

この男は、顔にレモン汁を塗ると監視カメラに映らなくなると思っていたのだ。心理学者のデビッド・ダニングはこのニュースを知って、「人間はなぜこれほど愚かになれるのか」と疑問に思った。

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無知とは一般に、「正しい知識をもっていないこと」と定義される。

だがこれだけでは、その空白に「レモンジュースを顔に塗ると透明人間になる」というとんでもない勘違いが入り込んでくる理由を説明できない。

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