現在、世界初の劇場版ドキュメンタリーとなる「プリンセス・ダイアナ」と、彼女が最も悩んでいた頃が描かれた映画「スペンサー ダイアナの決意」が公開中だ。未来の王妃の座を捨て、女性として、母として、1人の人間として生きる道を選んだダイアナ元皇太子妃の姿は、多様性が叫ばれる21世紀に生きる私たちの目にはとても悲劇的に映る。

けれど同時に、映画の中のダイアナの葛藤は、今を生きる私たちが、“本当の自由とは何か”に気づく上での示唆に富んでいる。そこで、この2作品の公開を盛り上げるべく発足した“ダイアナプロジェクト”のアンバサダーに就任した米倉涼子さんに、今回の2作品を通して、「自分の足で自分の人生を切り拓いていく」ことの楽しさと難しさについて聞いた。

撮影/張溢文
 

ダイアナさんは“戦う女性”

「この2つの映画を観て、漠然とですが、『ダイアナさんは“戦う女性”だったんだな』という感慨がありました。今は、自分なりの生き方をチョイスしている人が魅力的に見える時代ですが、映画を観る前は、『王室に嫁いだダイアナさんは、伝統を受け継いでいくという保守的な世界での犠牲者』という印象でした。それが、映画の中でダイアナさんは、たくさん葛藤しながらも、押しつけの価値観から逃れて、自由になろうとして行動していた。その生き方が、すごくアーティスティックだな、と。

たとえば今、世界中の誰もが知っているゴッホやモディリアーニのような画家でも、生前、ほとんど絵が売れなかったといいますよね。音楽では、エルヴィス・プレスリーもフレディ・マーキュリーもマイケル・ジャクソンも、何か新しい価値を生み出している人は、誰もが当時の偏見や価値観と戦っていた。時代の先を行く人たちは、同時代に生きる人たちからすると、理解不可能な部分も多いけれど、その生き方そのものが、後進に対しての道を切り拓いてくれるんです」

「プリンセス・ダイアナ」全国公開中 (c)Kent Gavin

「魂の自由」を求める権利は誰にでもあるはず。なのに映画の中では、周囲が皇太子妃という立場に縛り付けようとした。「あなたはそういう立場じゃない」「こうあるべき」という決めつけや先入観との戦い。「期待に応えたい」と思う真面目さがあればある人ほど、自分を騙し、嘘をついて生きなければならなくなる。若き日のダイアナはその典型だった。

「20歳で全国民や王室の期待に応えるには、彼女はあまりにも美しくて、あまりにも若かった。どの時代でもどの会社でもどの家庭でも当てはまる部分があると思うんですが、周囲の評価と本当の自分にズレが生じると、人って苦しくなりますよね。うまく振る舞えていたときは、周囲は現状維持を求めるけれど、そこにはどうしても無理が生じるから、だんだん『このままじゃ自分がダメになる』っていうことがわかってくる。本当の自分を受け入れられてもらえないとき、人は、ものすごい孤独を味わわなきゃいけないんだなっていうことも、あらためて感じました」