マンガ/伊藤理佐 文/FRaUweb
「美容」と「めんどくさい」は共存できるのか
「洗浄成分が肌に残ると、それが刺激となって肌が弱り、赤みや乾燥の原因に。流水をすくってあてる動きを30〜40回繰り返しましょう」『一週間であなたの肌は変わります 大人の美肌学習帳』がベストセラーとなった美容家・石井美保さんがいえば、その石井さんを慕う田中みな実さんもインタビューで「当時から研究熱心で、ヘアメイクに2時間かけて学校に行っていました」と語る。
「美しさ」で多くの人から憧れられる二人のこの言葉を見ても、「美容」と「めんどくさい」と言う言葉は「共存できるはずもないワード」のようにも思える。
しかし、「美しさ」を極める美容雑誌「VOCE」で、美容とめんどくさいをなんとか共存させたるぞ!という連載が、伊藤理佐さんのマンガ『女のはしょり道』だ。
なんと連載から15年、100回を優に超えた人気連載の最新刊5巻の発売を記念して、5巻特別無料試し読みと伊藤さんのコメントをご紹介する。
ズルするためにレーザーに通う
伊藤理佐さんと言えば『おいピータン!!』をはじめとした作品で講談社漫画賞や手塚治虫短編賞を受賞しているショート漫画の名手。週刊文春「おんなの窓」のひとコマ連載では、「週刊文春を買ったら後ろから見る」という人もいるほどだ。
そんな伊藤さんの「はしょり道」は……。
例えば、眉毛の形が左右違うことが気になっていた時。うまく描けるかいつも気にしていて「眉毛の色が薄くなればいいんじゃない?」と脱色をしてみたり(脱色中を人にみられると辛い)。化粧水などをつけない代わりにシミはレーザーで取りに行ったり。常在菌は実は肌にいいと聞けば、ぴちぴちの小学生の娘のお肌に自分の肌をこすりつけようとたくらんだり……。要はめんどくさがりだけどキレイになりたいという人のあがきが満載だ。実はズルしているようでけっこう遠回りだったり、はしょろうとしてちょこちょこ失敗したりしているのだが、「めんどくさくはない」ので良しとなる。

実はそうやってあがく人は少なくないのではないだろうか。パックをして20分放置するなんてできないとか、化粧水をつけてクリームを塗って乾かして下地を塗ってなんて無理!とか。もちろん、スキンケアをゆっくりすることは心身のリラックスにもなるし、その時間が好きな人は楽しめばいい。でもめんどくさがりだってキレイになりたいと思っていいではないか。
これからの「はしょり道」は……
1969年生まれの伊藤さん。共感しながらガハガハ笑えるこのエッセイマンガを、どんな思いで描いているのだろう。
――「美容雑誌」への連載で最初から「はしょり道」というタイトルにした理由を教えてください。
他のタイトル案で「ズルために一生懸命」というのがあり、もう、最初からズル、はしょり、をするまんまん、つーか、それしかできないという感じで……。
――連載が進んでいくごとに、年齢と美容との付き合い方をリアルに感じます。単行本の1巻刊行が2008年で、連載開始からはなんと15年もの歳月が流れています。出産も経験してこの15年で「きれい」への意識は変わりましたか。
「つかむアイテムがかわっただけで、基本精神は変わってない感じが……。
大事な『上書き』がされてない感じが……。
おなじとこ耕してる感じが……。
す、 すみません」
――これからのはしょり道はどんな方向に行くのでしょう。
介護方面だと思います。まじで!
***
結婚や出産、病気、加齢……それぞれにはそれぞれの人生がある。伊藤さんのマンガを読んでいると、ズルするために一生懸命っていいじゃん!(失敗はいっぱいするけど!)と力が抜けてくるのである。