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影響を受けるのは誰?対策は? 気象学者に聞いた「気候危機」9つの質問
2022.10.31

きちんと知りたい気候危機Q&A

影響を受けるのは誰?対策は? 気象学者に聞いた「気候危機」9つの質問

気候危機の原因は、人間の活動が引き起こした地球温暖化です。だからこそ、まずは地球温暖化の仕組みや状況をきちんと理解することが大切。地球で今起こっていることと私たち人間の責任について、基本を学びます。国立環境研究所の江守正多さんに話を伺いました。

江守正多(えもり・せいた)
1970年神奈川県生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。1997年より国立環境研究所に勤務。専門は地球温暖化の将来予測とリスク論。IPCC第5次、第6次評価報告書の主執筆者のひとりでもある。

きちんと知りたい気候危機 Q&A

Q1 地球の気温は本当に上昇しているのですか?

ANSWER はい、地球温暖化は疑う余地のない事実です

気候変動について、最新の研究成果を評価する国際的な組織がIPCC(気候変動に関する政府間パネル)です。IPCCの第6次評価報告書によると、2011~2020年の世界平均気温は、1850~1900年の世界平均気温より1.09℃上昇しています。ちなみにIPCCが参照する気温データは、地球上の様々な観測地で測定されたもの。人間が生活する場所だけでなく、海上なども含まれます。

地球温暖化を引き起こしているのが温室効果ガスであることも事実です。「太陽活動が活発になっているのでは?」という懐疑論もありますが、太陽活動の活発さを表す黒点は減少しています。「大気中に0.04%しかないCO2に地球を温めるほどの力はないのでは?」という声もありますが、大気の99%を占める酸素と窒素は、地球を温める赤外線の吸収・放出に影響しない物質。大気を温めるのは1%以下のCO2やメタンといった温室効果ガスだけなのです。

Q2 気温上昇の原因は私たち人間なのですか?

ANSWER IPCCでは、気温上昇は人為的要因だと結論づけています

地球は約10万年周期で暖かい間氷期と寒い氷期を繰り返していて、現在は間氷期にあたります。しかし、300年程前に小氷期と呼ばれる少し寒い時期があったので、その事実から「今は間氷期に向けて地球が自然と温まっているだけ」とする意見があるのも事実です。ですが、この急激な気温上昇はそれだけでは説明がつきません。

IPCCでは1850~2020年までの世界平均気温を、自然要因だけの場合と、そこに人為的な要因を加えた場合とでシミュレーションしています。1950年頃までは2つの気温に大きな差はありませんが、1950年以降から人為的な要因を加えた気温が上昇を続けます。一方、自然要因だけでは気温上昇はほとんどありません。そして、実際の観測データは、人為的な要因を加えたシミュレーションとほぼ重なるのです。この結果からIPCCでは、地球の温度上昇を人為起源によるもの、つまり人間活動が主な要因だと結論づけています。

Q3 報告書ではどのように表現されていますか?

ANSWER 人間活動が気温上昇の主な原因であることは“疑う余地がない”と強く断言されています

IPCCは1990年以降、5~7年ごとに報告書をまとめて発表しています。その中で、地球温暖化と人間活動の関連性を示す表現も変化してきました。

2001年に発表された第3次評価報告書では「可能性が高い」という表現。これは66%以上の可能性で人間活動が気温上昇の主な原因であるという意味です。

第4次評価報告書では「可能性が非常に高い(90%以上)」、第5次評価報告書では「可能性が極めて高い(95%以上)」となり、2021年の第6次報告書でついに、「疑う余地がない」と断言するに至ったのです。

報告書の表現は関連性を数値化したうえで厳密に選ばれています。研究が蓄積した結果、結論が導き出されているのです。

Q4 IPCCの報告書は信用できるのですか?

ANSWER 過程がオープンにされた透明性の高い報告書です

この疑問を払拭するには、報告書が完成するまでのステップを知ってもらうといいと思います。そもそもIPCCは、1988年に世界気象機関と国連環境計画によって設立されました。気候変動について世界で話し合うには、各国が共通の科学的知見を参照していないと意味がないからです。

IPCCは、それぞれの学会で発表された1万4000本もの論文を引用して、最新の科学的知見を報告書にまとめています。関わる研究者は66ヵ国から200人以上。報告書の原稿には3回のレビューが入ります。原稿をネット上で公開し、世界中の専門家や政府の代表者からコメントを受け付けるのです。IPCCはそのすべてに対応します。第6次評価報告書に寄せられたコメントは7万8000件。全コメントとそれに対するIPCCの方針もネット上で公開されています。IPCCは政策的な要請を受けた評価機関ですが、活動内容や報告書の制作過程は極めて透明性が高い。それが信用につながっています。

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