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影響を受けるのは誰?対策は? 気象学者に聞いた「気候危機」9つの質問
2022.10.31

きちんと知りたい気候危機Q&A

影響を受けるのは誰?対策は? 気象学者に聞いた「気候危機」9つの質問

Q5 温暖化を止めるために世界で決めた目標は?

ANSWER 気温上昇を2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えること

2015年のパリ協定では「産業革命前に比べて、気温上昇を2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えるための努力をする」という目標が掲げられました。先進国も途上国も、すべての国が参加する目標です。達成するためには、2050年の時点で、世界全体がカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を実現する必要があります。

ですが、2017年にアメリカのトランプ前大統領がパリ協定からの離脱を表明。世界の足並みが乱れました。状況が変わり始めたのはバイデン政権の誕生が確実になった2020年末。日本政府も2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言し、アメリカも翌年パリ協定に復帰しました。

世界の平均気温はすでに、産業革命前に比べて1.09℃上昇しています。これを残り30年弱で2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑える。これが今、地球全体で取り組まなくてはいけない厳しい目標です。簡単ではありませんが、世界は動き始めています。

Q6 1.5℃の上昇に抑えれば地球は大丈夫ですか?

ANSWER 違います。約1.1℃上昇している現在すでに、世界各地で異常気象が多発しています

世界の目標値が「2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑える」だと知って、「1.5℃に抑えれば地球は大丈夫なのか」と思う人もいるかもしれません。でも、それは違います。1.09℃上昇している現時点で様々な異常気象が発生しているのです。みなさんも、夏の暑さが以前より厳しくなっているように感じているのではないでしょうか? 豪雨や強い台風による被害も毎年のように発生しています。

気温が1.5℃上昇すると、こうした状況がさらに悪化します。2℃上昇すればよりリスクが高まる。1.5℃に抑えられたら大丈夫なわけではなく、現時点ですでに大変で、1.5℃ならばもっと、2℃ならばもっともっと大変になるのです。

Q7 温暖化が引き起こすのは異常気象だけですか?

ANSWER いいえ、豪雨や干ばつの後には食料不足や飢餓が襲ってきます。すでに世界では「気候難民」が増加しています

自然災害の後には、水不足や農作物の不作、それらによる飢餓が襲ってきます。気候危機によって故郷を追われる「気候難民」は世界ですでに増加。国際シンクタンクの経済平和研究所は「2050年までに少なくとも12億人が居住地を追われる可能性がある」と指摘し、国連も支援の必要性を示しています。

また、こうした影響を真っ先に受けるのが発展途上国の貧しい人々であることも忘れてはいけません。アフリカを襲う干ばつや、小さな島々の生活を脅かす海面上昇。しかも、彼らは先進国に住む我々に比べて温室効果ガスを出していないのです。こうした状況は先進国が北半球、途上国が南半球に偏っていることから、「南北問題」とされ、温暖化対策の重要な論点になっています。

Q8 温暖化の影響を受けるのは誰ですか?

ANSWER とくに深刻な影響を受けるのは途上国など、弱い立場の人たちです

弱い立場の人たちとは、発展途上国の人々や、若い世代の人々です。温暖化対策を決める政治家の多くは高齢で、実際に影響を受ける若者の声は軽んじられています。

ここで紹介したいのが“climate justice”という言葉です。日本では「気候正義」と訳されますが、「正義」よりも「公正」や「公平」が近いでしょうか。環境問題を訴える運動「Fridays For Future Japan」の若者たちは、「気候正義」に加えて「静かな暴力」という表現も使います。私たち日本人が普通だと思う暮らしが途上国の生活を脅かしている。それは無意識の暴力だと言うのです。日本では環境問題において倫理観を語ることが少ないですが、「気候正義」はパリ協定の条文の前文にも登場する、欧米ではメジャーな概念です。

世の中が格差構造の上に成り立っているのは事実ですし、そのすべてを解消するのは理想主義かもしれません。ですが、誰かの犠牲の上にある社会を変えようとするのは、脱炭素を目指す根本の理由ではないでしょうか。

Q9 温暖化を止めることはできるのでしょうか?

ANSWER 3.5%の人が行動を起こせば世の中に変化が現れます

繰り返しになりますが、世界平均気温は産業革命前に比べてすでに1.09℃上昇。これを残り30年弱で2℃より十分低く、できれば1.5℃に抑えるのは簡単ではありません。ですが、政府や企業もついに本気で動き出しました。このような状況に、温暖化の研究家として驚き、感動しています。

面白い研究結果があって、過去の革命や改革を調べると、国民の3.5%以上が参加する非暴力の抗議運動が起きた場合、その社会には必ず大きな変化が起こったそうです。例えばタバコ。数十年前までは病院や飛行機でも喫煙できることが当然でした。この常識を変えたのは、受動喫煙の健康被害を立証した疫学者や嫌煙権訴訟を闘った原告や弁護士といった一部の人たち。無関心だった多くの人々はその声に従っただけなのです。

人類は奴隷制度も植民地制度も卒業したのだから、化石燃料文明もきっと卒業できるはずです。そのために大切なのは、やはり、私たちひとりひとりのアクションです。

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