2022年秋ドラマでは、ミステリー要素を絡めた研修医ドラマ『祈りのカルテ』、フリーランス看護師の『ザ・トラベルナース』など医療ドラマ枠が充実している。しかも、今までとはちょっと違った視点の医療ドラマが多い。中でも、今まであまり描かれてこなかった小児の集中治療室を舞台にしているのが、吉沢亮主演の『PICU(小児集中治療室)』だ。

「成人の集中治療室はドラマでもよく出てきますが、子どもや赤ちゃんの集中治療室に関してはあまり描かれてきていません。でも、成人と同じように、子どもや赤ちゃんでも集中治療室が必要な事態は発生します。子どもの場合は、大きく分けて2種類あり、新生児に対応する『NICU』、基本的に15歳以下の小児科の患者さんに対応するのが『PICU』になります。大人とは治療器具や機器のサイズはもちろん、対処も異なるので、とても重要な治療現場となります。ですが、日本ではまだまだ少ないのが課題でもあります」と語るのは、実際NICUで治療し、現場を見続けてきた新生児科の今西洋介医師だ。

今回は、小児の集中治療室の中でも、赤ちゃんに特化した『NICU』とはどんな治療現場で、どんな環境なのかを今西医師寄稿で解説してもらった。

以下、今西洋介医師の寄稿です

 

赤ちゃんのためのNICUが変化している!?

生まれてから赤ちゃんに医学的な問題があると入院し治療を行う場所を『新生児集中治療室(NICU)』と呼びます。日本では1970年頃から導入され始め、2022年現在、全国の408ヵ所の周産期母子医療センターに設置されています。赤ちゃんが入院する病棟で、人が「人生で最初に入院する可能性のある」病棟です。NICUは子供の成育という観点から見ても、胎児期と小児期の間を繋げるとても大切な場所なのは間違いありません。現在、日本の赤ちゃんの14人に1人が入院すると言われています(※1)。

みなさんNICUってどんなところだと想像しますか? たくさんの保育器並び、その間にさまざまな機器が置かれている……、そんな空間を想像するでしょうか? 実際に入院された方々はどんな空間かわかると思いますが、お世話になることがなければ、「見えない」世界であると同時に「知らない」世界のままの方も多いでしょう。

この『NICU』、赤ちゃんのことを考え、赤ちゃんに優しい世界に段々と変化してきています。治療はもちろん、大きく変化しているのが「環境」です。

私が医学生だった約20年前、大学病院のNICUでポリクリ(臨床実習)を行いました。当時のNICUは、入室する際に靴も専用の内履きに履き替え、専用ガウンを着て、手術用の帽子を着けて治療を行っていました。さすがにN95マスクまではしませんが、今の新型コロナウイルス感染対策に近い姿で診療していた記憶があります。

それが今は基本的に、NICU入室は専用の内履きに履き替えませんし、手術用の帽子も処置以外には基本装着しません。また、ガウンと手袋も保育器で赤ちゃんに対する診察や処置をするとき装着するのみです(サージカルマスクは常にしています)。

こちらは海外のNICUの現場の写真だが、日本もスタッフの装備はほぼこんな感じだ。photo/iStock

変わったのは、治療するときのスタッフの外見だけではありません。

20年前のNICUは部屋全体を暗くし、人工呼吸器やアラームの音などが常に鳴り響いていました。医師や看護師といったスタッフの声もこだまし、光がない状態で様々な音が鳴り響くというかなり特殊な空間だな、と学生ながら感じました。

ですが現在は、赤ちゃんを取り巻く環境に関してアップデートが進んでいます。

例えば、以前の記事で触れたことがありますが、1980年代まで「赤ちゃんは痛みを感じない」と信じられていました。そのため赤ちゃんは手術の際に麻酔なしで胸や腹を開けられていたという何とも恐ろしい時代がありました。こんなに医学は日進月歩で進んでいるにも関わらず、赤ちゃんに関することは医学的にわからない部分が多かったのです。ですが、少しずつ赤ちゃんのことが判明し、それに合わせて、NICUの機能も変化が生まれてきています。