2022.11.14

ヨーロッパ音楽が世界を支配した理由は、標準化にあった!

近代五線譜が世界の音を支配した!
音楽や楽器という言葉から連想するものは一体何であろうか?

多くの人たちはヨーロッパのクラシック音楽を想像し、ピアノやヴァイオリンを頭に思い浮かべるかもしれない。

「音楽」というといわゆるヨーロッパの芸術音楽を指し、その他の音楽で馴染みのないものは、大抵ミンゾク音楽と呼ばれている。

では、なぜ、ヨーロッパ音楽が世界の主流となり得たのか? その秘密は、音の定量化と標準化にあったのだ!?

(※本稿は、郡司すみ『世界の音』を一部再編集の上、紹介しています)

「楽器」という言葉から連想するものは?

わが国では一般に「楽器」という語はオーケストラの演奏に用いられるものを主体としたヨーロッパの楽器を意味しており、それ以外の楽器はしばしばミンゾク楽器と呼ばれている。

このミンゾクという語が“民族”であるのか“民俗”であるのか、文字で書かれていてもその用法は曖昧なことが多い。

同様のことは音楽にも見られ、「音楽」というといわゆるヨーロッパの芸術音楽を意味し、その他の音楽で馴染みのないものは、大抵ミンゾク音楽と呼ばれている。

思うに、われわれの音楽に関する大部分の知識は義務教育の中で授けられたものが土台になっており、その内容はヨーロッパの音楽が主体であると言える。

個人個人のその後の音楽的な教養の差はあるにしても、一般的な日本人のヨーロッパ以外の音楽に関する知識は、自国の音楽をも含めて非常に少ないのが現実である。

“ヨーロッパ音楽”と無造作に書いてきたが、わが国の義務教育はもとより、かなり専門的な教育・研究の分野で対象となっている音楽でさえも、彼の地で有史以来培われてきた種々の音楽の中のきわめて狭い範囲、すなわち、およそ十七世紀以降に西ヨーロッパで確立された体系的な形をとった音楽、言い換えれば音が定量化・標準化された後の、いわゆる近代五線譜による音楽に限られている。

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音楽を知らなくても音を出せる!?

身近な例をあげてみよう。

ピアノを習う子供は、音の高さ、音の長さなどが量的に表され、それが一定の形式で記されている楽譜の読み方を覚え、それに従って鍵盤を押し、ペダルを操作することに熟達すれば、難しい楽曲でも音にすることができる。

このようなことが可能であるのは、“ヨーロッパ音楽”では使用される音が一オクターヴ内に十二音に限られ、各音の高さ(周波数)も定められていて、特にピアノなどの鍵盤楽器では対応する鍵[けん]を押せば直ちにその音が出せるようになっているからである。

表面的に見れば、楽譜通りに鍵を押し、ペダルを操作することは、タイプライターや昨今のワードプロセッサーに向かって原稿を見ながら印字する行為と大差なく、英語を知らなくても英文を記すことができるように、音楽を知らなくても音を鳴り響かせることができるようなシステムが確立されているのである。

これに対して、例えば三味線を習う子供は、原則として楽譜がないので、師匠の弾く音を聴いて覚え、その音を出すために勘どころ(音の高さを決めるために弦の長さを区切る位置)を覚え、求められる音色を出すための撥[ばち]さばきなどを自ら手探りで会得[えとく]しなければならない。

そしてなによりもまず、ほとんどの場合は曲の主体である唄を覚え、同時に唄えるようになることが前提となるのである。

このような学びかたで何よりも必要となるのは集中力で、この場合の三味線のお稽古は集中力の養成に他ならないと言ってもよいであろう。

何事によらず、このような形の教育を受けて一定以上の修練を積んだ人に、全人的な教養とでも言えるものが備わってくるのは、集中力を養い、五感・五体の鍛練を重ねた賜[たまもの]であると思われる。

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