2022.11.14

ヨーロッパの上流社会に属する人々が、好んだ楽器とは?

視覚的・思想的メディアとしての楽器
楽器をひとうのメディアとして考えたとき、視覚的なものと思想的もののふたつの概念が思い浮かぶ。

前者は楽器に施された装飾や楽器そのものの形、
後者は宗教との結びつきのなかで固定化される通念。

長い歴史をへて、楽器はどのように社会のなかに溶け込んでいったのか!?
「メディア」をキーワードに、楽器を解説していこう!

(※本稿は、郡司すみ『世界の音』を一部再編集の上、紹介しています)

楽器の音は心象を表現するメディアの一つ!

楽器の音は人間が思想や感情など心に浮かぶもの(心像)を表現する際に使用するメディアの一つであり、楽器はその音というメディアを作るために人間の抱いている心像と音との間に立つもう一つのメディアである。

心像は聴覚的に具体化されるばかりではなく、視覚的な具体化も可能で、象徴的・幻想的な形をとった視覚メディアが楽器の上に付加されて音の効果を高めていることもある。

また反対に、例えば近年のサウンド・スカルプチュアのように、視覚メディアである造形物に聴覚メディアとして音が付加されている場合もあるが、これらもやはり楽器と呼ばれている。

このような視覚的表象は楽器の性質によってもその方法が異なり、大別すれば形と図像および色によって表されていると言える。

最も直接的であるのは、楽器全体を表そうとする対象そのままの形に作る例である。

photo by iStock

呪具としての楽器に塗られた赤色の意味は?

カナダ北西海岸のツィムシアン(Tsimshian)族のシャーマンが使用するサン・ムーン・ラトル(Sun-moon rattle=日月のガラガラ)がそのよい例となろう。

ここに表されているものは大からすで、この地域の人々が自然の創造主として崇めている動物である。

からすの背の上には力強い超自然的存在のサンダーバードが、または多くの人々から再生・多産などの象徴と思われている蛙が付いているという。

比較的多く見られるのは、楽器もしくはその付属品の一部が装飾的に造形されている例である。

この場合は楽器の機能との関わりにおいて、その位置や規模がある程度制限されていたり、変形されて図案状になっているものもある。

また楽器の上に象徴されるものが描かれることがある。

例えば太鼓の膜に描かれた竜や巴などはよく見られる例であるが、最も意味深く、しかも見過ごされやすいのは楽器や付属部分の彩色に用いられている色であろう。

ザックス(C. Sachs)は太鼓をはじめ呪具としての楽器には、いけにえとの関わりにおいてしばしば人間や動物の血が塗られたことから、太鼓の周囲に巻き付けられた布や紐、あるいはその他の楽器にも用いられている赤い色は血を意味すると述べている。

これらの視覚的メディアは楽器の考証の上で大きな助けとなる重要な材料であり、またその楽器の属する文化を知る上でも見逃すことのできない手がかりでもある。

インドのパウワウ photo by iStock

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