2022.11.14

人口問題と資本主義社会の危うい関係! 〈制度〉の見直しが重要だ

J・S・ミルが示す古典派経済学の臨界点
人口問題の解決は日本の喫緊の課題である。

少子化による市場の縮小、生産年齢人口の減少、急速な高齢化による社会保障の増大に対し、政府は高齢者の雇用や需要喚起政策、金融政策など様々な対応を図っている。

だが、それらが有効に機能せず、根本的解決に至っていないのは何故なのだろうか?

この問題を考える上で『人口の経済学 平等の構想と統治をめぐる思想史』は多大な示唆を与えてくれる。

人口をめぐる経済学者の思想史を振り返ると、何が見えてくるのだろうか?

ここでは、フランス革命、産業革命という激動の時代の人口論――特にJ・S・ミルの思想について読み解く。

(※本稿は、野原慎司『人口の経済学』を一部再編集の上、紹介しています)

資本主義社会は終焉するという法則

ミル(1806-73年)に至るまでの古典派経済学は、平等な社会は可能かという問いに関与し続けていた。

そして、平等な社会は既存の資本主義社会の制度の変革に基づくものとし、その上で、最良の制度とは何かが構想され続けた。

とりわけマルサス(1766-1834年)以降のこの時期の人口論は、平等な社会の実現という課題と切り離せないものであった。マルサス以降資本主義の進行法則が考えられたのは、マルサスが人口法則という形で社会の進行を法則化していたことが大きい。
そして、人口法則を考える中で、マルサス以降の古典派経済学者は経済認識を発展させた。

その際、人口の増加は、土地をはじめとする資源の稀少に人々を直面させるものであった。

人口が増加すると土地が稀少となり、劣等地が耕作され、農業生産性は下がり、食糧価格は上昇するであろう。それは貨幣賃金の上昇を生じさせる一方、資本利潤の低下を生む。

こうして、資本主義社会で経済が発展するほどに、その社会の終わりが論理的に帰結することになる。ミルにおいては、その終わりと次の社会が構想されていた。

マルサス wikipedia

資本主義の制度内で解決するのか、制度外で発想するのか?

マルサスやリカードウ(1772-1823年)やミルが生きた時代は、人口が急増する時代であった。彼らが人口増加を危惧し人口増加の抑止を重視したのには、そうした時代背景があった。

そして、経済が一定程度成長している前提のもとでは、人口増加が抑止されれば労働者の生活状況が改善するとマルサスやミルは考えた。

ただ、リカードウやミルが資本主義の運行の法則の先にある論理的帰結を探究したのは、単に経済理論のみに興味をもっていたからではなく、その統治論的・制度論的含意が依然として重要であったからであった。

ここに至って、経済それ自体の法則の自律性が打ち出され、資本主義社会は経済固有のメカニズムにより捉えられたが、資本主義社会の行く末を決定づけるのは最終的にはどのような統治を選択し、制度を選択するかの問題なのであった。

こうして、彼らにおいて統治論は18世紀啓蒙主義者と異なり、土地のような資源の稀少が生じる場合にも、不平等は不可避とは限らないことを示そうとした。

その際、リカードウのように資本主義という制度のあくまで枠内で発想するのか、ミルのようにそれを超えた制度を構想するのかが焦点となった。リカードウやミルにとって、統治論としての経済学は資本主義が前提とする制度を認めるか否かが、根底における対立点だったのである。

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