日本経済という大きな視点からみると、ゾンビ企業が1割以上にのぼるという現況は、どう評価すべきなのか。
「ゾンビ企業が日本の健全な経済成長を阻害しているという認識は、産業界全体で根強い。マクロ経済学的に言えば、業績を上げられなかった企業が淘汰され、より競争力のある企業が台頭するのが経済発展の根本原理です。
ゾンビ企業の存続のために使用した数兆円を新規ベンチャー企業に投資しておけば、大きな利益を生んでいたかもしれないので、ゾンビ企業の発生が常態化しているのは本当に大問題なんです」
またゾンビ企業の存在はサービス、商品の価格相場を破壊しかねないとも言われる。
「ゾンビ企業は利益を上げることを第一目標にせず、従業員への給与支払い、コストの維持に努める傾向があります。したがって、会社のコスト維持のために商品、サービスの利益率を下げて固定客の獲得を狙おうとする傾向にあるため、ダンピングが非常に起こりやすい。
あるゾンビ企業が安く商品を販売しているために、健全な同業者が割を食う羽目になってしまうことはよくある話なんです」
ゾンビ企業増加を招いた銀行の仕組み
ゾンビ企業が蔓延しているのはたしかに問題だが、その責任の一端は金融機関にあると鈴木氏は分析する。
「銀行員は4年ほどで支店を異動する慣例となっていますが、その期間内に融資を担当した企業が倒産してしまうと担当者本人の責任になり、出世の道が閉ざされてしまうことも少なくありません。

したがって、銀行員は自分の担当する企業をなるべく潰さないように立ち回ることになります。倒産が秒読みの企業でも、上司を説得できるよう資料を書き換えたり、データの見え方を変更して経営が改善しているように見せたりなどして、上手くその企業を存続させられるよう行動するんです。
また地元の有力企業や大手企業などが潰れてしまうと銀行全体として困るので、追加で融資を行うことも珍しくないでしょう。一方、零細中小企業などは潰れても特に困らないので、銀行は割とドライに融資を打ち切る傾向にありますね」