国家間格差の背景3:社会の多様性
社会の多様性の度合いも格差に影響する、とガローは言う。今日ではあまりにも「多様性が重要」と言われているから、「またか」とうんざりする人もいるだろうが、経済発展には多様性が関係することは、いくつもの研究が示している。異なるものが出会うことでアイデアが交雑し、イノベーションが生まれるからだ。
ただし多様性がもたらすのは、良いことばかりではない。価値観が異なる人たちが出会い、近接した場所で暮らすことは、社会の結束を弱め、内戦を増やし、個人間の信頼を低下させ、時には景気を悪化させてきたことも示されている。たしかにアメリカ社会を見ても、多様ではあるが衝突も多いことは容易に想像が付く。
社会の「安定」だけを取りたいのであれば、多様でなくてもいい。しかし新しい技術やアイデア、「経済」を取りたいのであれば、あった方がいい。
その影響はいかほどのものか? 世界でも国民の多様性が際立って低いボリビアで文化の多様性を上げれば、ひとりあたりの所得は現在の5倍になる可能性があるという。