飲食店の「二極化」が進む?
重盛氏いわく経営的な観点から見ると、近年の飲食業界では客を呼び込むことが最優先になってきており、どのように満足度高めるかという視点が欠けているという。
「よほどのオーナー企業ではない限り、大手の飲食チェーン店では、上層部は常に流動します。そうなると自分が役職に就いているときだけ、数字を上げればいいという思考に陥りやすいんです。
そのため、本当にお客の幸せを考えているかどうか、どうしても疑問を抱いてしまいます。人手を減らせば固定費はどんどん削減できて、目先の利益は上がって一見いいことづくめに思えるかもしれませんが、それによって失われるものもあるはずです」
貧困化が進んでいると言われる日本。このままでは“高級店はきれい”、“安いチェーン店は汚い”という二極化が進んでいきそうだ。
「その可能性は十分あるでしょう。今後はリーズナブルな価格のチェーン店では、これまでのような清潔さを期待できなくなるのかもしれません。ですが、やはりお客が納得できるレベルの衛生環境は保ってほしいものです。
もちろん客単価が3万円のお店と1000円のお店で求められる清潔感は異なるので、すべてのお店に同程度を要求するのは筋違いでしょうが、最低限ごはんを食べていて美味しいと感じられるレベルの衛生環境づくりは大事です。
コストカットを言い訳に“汚くてもOK”という方向に進んでしまうのは、飲食店としては好ましい態度とは言えないですね」
――コストカットや人手不足の対策として、ロボットなどを導入して自動化を進めるのは理解できる。しかし、その余波で従来は配慮できていた衛生面がおざなりなるのは別問題ではないか。今、飲食業界は大きな分水嶺にあると言えるだろう。
(取材・文=文月/A4studio)