日本代表「主将」リーチ マイケル選手が、W杯日本大会前にチームメイト相手におこなった「意外なこと」
強豪相手の黒星に悔しがる
強い相手と戦った。ひとつのプレーにいつも以上のエネルギーを消費するのは当然だ。ましてスタンドには、65188人のファンを集めていた。気も張っていただろう。
10月29日、東京は国立競技場。メインスタンド下の関係者口付近で、リーチ マイケルがほぼネイティブ同然の日本語で漏らす。
「むっちゃくちゃ、疲れました。久々にこんなに疲れたという感じ。まだまだですね」

この午後はラグビー日本代表の6番をつけ、オールブラックスことニュージーランド代表との試合にキックオフから後半22分まで出ていた。
とにかく身体を張った。空中戦のラインアウトで何度も相手ボールに圧をかけ、相手の密集に頭や肩をねじ込み続けた。
走者を止めるタックルも連発した。
ともにスコアレスの前半9分頃、自陣ゴール前中央で対するホスキンス・ソトゥトゥにぶつかり、差し込まれながらも手元に腕を絡め、落球を誘った。
24―28と僅差で追い上げる後半17分には、ハーフ線付近右中間でスティーブン・ペロフェタのランを正面から受け止めた。
そのままボールに手を伸ばそうとしたところ、ペロフェタのサポートに入ったブロディー・レタリックに妨害され、芝に尻をつけた。
それでもなお、レタリックをどかして立ち上がった。
ノーサイド。31―38。
オールブラックスにこれからキャリアを積む若手や中堅が多かったのを差し引いても、アジアの新興国がワールドカップ過去3度優勝の強豪と競ったのは確かだった。
それでも白星を逃して悔しがる。かえって頼もしい。
「この(レベルの)試合では常に集中していないと、一気にやられてしまいます」
34歳。一時は度重なる故障と手術で本調子ではないように映ったが、最近は所属する東芝ブレイブルーパス東京の同僚にも「絶好調」と太鼓判を押される。
国内リーグを戦っていた今春までに体調を取り戻し、厳しい個人練習を率先しておこなえるようになった。ブレイブルーパスの同僚で元ニュージーランド代表のマット・トッドに倣ってバイクをこぎ、筋肉に負荷をかけた。
多少、追い込んでも乗り越えられるだけのコンディションになったことで、もともと自分を追い込むのが性に合っていたとあり水を得た魚となった。
リーチのプレーするフォワードの第3列では、攻守両面でのハードワークが求められる。自ずと活きのいい若手が相次ぎ台頭する。それでもオールブラックス戦までに通算76度のテストマッチへ出たベテランが、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチのファーストチョイスであり続けている。
パフォーマンスが一級品だからだ。何より、希少な経験をチームに還元する人でもあるのが心強い。
昨年まで通算約5年、日本代表の主将を務めてきたのだ。