塾の大学合格メソッドを受け入れる「落とし穴」
柳沢先生「たとえば『東京大学にたくさん受かりました。うちのやり方でいけば、合格します』という塾があるとする。でも、今流行りの勉強方法論をどんどん与えられるような環境で、パッと流れてきたものを簡単にのみこんで、それに従って勉強していくということは避けなきゃいけない。
そのまま流れに乗って、それをうまく使いこなせる人だったら、いい結果が得られるだろうけど、結局、自分の方法論を確立するには至っていないよね。すると、今度は大学に入った後に苦労するんだ。みんな同じ思考系列になっていて、その先の応用力や展開力がないわけだから。
大学の先生は『社会学はこうやって勉強したほうがいいよ』なんて、誰も教えてくれない。ということは、今まで勉強の仕方を習ってきただけの生徒たちは、どうすればいいか分からないから、何もできない。中高時代、東大に受かることが最大の目標だったとしたら、その目標を達成しちゃった後は、燃え尽きた東大生になっちゃうんだ」

親にとっても、大学受験のための塾や予備校を、いつからスタートさせるかは悩ましい問題だ。中高一貫校では「授業をしっかり受けていれば、塾の必要はない」と言われることもある一方、中学入学と同時に、東大合格率が高い有名塾に入って猛勉強を始める生徒もいる。
柳沢先生「受け身で勉強の仕方を習うんだったら、行ってもしょうがないけど、自分はこの分野が苦手だから補強しようという意思があるなら、塾に行ったほうがいいと思う。受験が見えてきて、この科目がちょっとヤバいよな、とか自分の立ち位置を知りたいというときに行くのがいいんじゃないかな。
だって、よく言うじゃない。馬を水辺に連れて行っても、水を飲ませることはできないって。のどが渇いていることが大事なの。そのときに、たとえば英語がものすごくできる友達に『おまえ、一体どうやって勉強しているの?』と聞きに行くのはOK。いい方法を教えてもらって、それを真似て、自分により合う形で修正をする。自分が自発的に聞きに行けば、修正することができるの。そうではなくて、一方的にどんどん与えられるものを鵜呑みにしていると、それだけで終わっちゃう。そこが一番のポイントだと思う」