2022.11.07
# アメリカ

米中間選挙に異変…民主党岩盤支持の「黒人層」に、徐々に広がる共和党シフト

トランプ支持まで現れる地殻変動の意味

インフレと並ぶ不安要素、治安悪化

GDP比11%、これがバイデン政権発足後に成立した政策の総支出額規模だ。2009年に成立したオバマ政権での景気支援策の規模であるGDP比5.5%を大幅に上回った。

特に8月は中間選挙を意識したのかCHIPSプラス法に始まり、インフレ抑制法、学生ローン債務免除など立て続けに実現させた。その割に、中間選挙では直前になって下院だけでなく、上院でも共和党に奪回されるリスクが浮上している。

世論調査をみれば、米有権者の優先事項がインフレを含めた「経済」であることは一目瞭然だ。バイデン政権下で成立した第3弾の景気刺激策“米国救済計画法”は1人1400ドルの現金支給を含む大判振る舞いだったが、これが需要を押し上げ供給制約と重なり物価を押し上げたとの批判も多い。

もうひとつ、中間選挙の行方を占う上で重要な課題こそ、治安の悪化である。バイデン大統領もこれを意識し、中間選挙前に370億ドル規模の治安対策を掲げた。しかし、米有権者の心をつかみ切れていない。

 

なぜ、米国で治安悪化が問題視されているのか。 世論調査結果の通り、犯罪が増加している事実も確認できる。非営利団体の刑事犯罪評議会(CCJ)によれば、今年上半期に窃盗は前年同期比20%増、強盗は同19%増、自動車泥棒も同15%増と2桁増となった。殺人事件件数こそ減少したが、犯罪の増加が見て取れる。

殺人事件件数が減少したとはいえ、それに安堵していられない。FBIが発表した2021年の殺人事件被害者数は急増した2020年比17.6%減の1万4677人だったが、これは人手不足などを背景とした未処理件数を含む暫定値であるためだ。

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