2022.11.07
# アメリカ

米中間選挙に異変…民主党岩盤支持の「黒人層」に、徐々に広がる共和党シフト

トランプ支持まで現れる地殻変動の意味
安田 佐和子 プロフィール

黒人層でトランプ支持が増加?

黒人と言えば、これまで民主党支持が約9割とされてきた。2016年の米大統領選で民主党のヒラリー・クリントン候補の得票率は89%、ジョー・バイデン候補も87%。ヒスパニック系のそれぞれ66%、65%と比較しても、黒人が民主党にとって岩盤支持層であることは明白である。

しかし、その岩盤の支持層である黒人に変化が現れ始めた。ワシントン・ポスト紙9月18~21日に実施した世論調査によれば、「今日、大統領選に投票するなら」との質問に「民主党」と回答した黒人有権者は79%に対し、「共和党」は18%だった。

何より特筆すべきは「バイデン大統領」との回答になれば70%へ低下すると同時に、「トランプ前大統領」は23%へ上昇する。この結果は、黒人層の間でトランプ支持者が少しずつ増加している状況を物語る。2016年米大統領選でのトランプ氏の得票率は8%に過ぎなかったが、2020年には12%へ上昇。コーネル大学のデータに基づく1976年以降の米大統領選での共和党候補の得票率は2020年のトランプ氏が1996年以来で最高だった。

 

黒人有権者の間でトランプ支持者が小幅ながら増加している理由として、2019年8月に黒人の失業率が過去最低を更新するなど経済的な恩恵を受けたことが考えられよう。また、黒人のキリスト教的宗教観が保守層と親和性が高いことも一因だ。トランプ氏の「米国の再び偉大な国に」とする分かりやすいモットーと力強さが、ヒップホップに通じるマッチョな文化と親和性が高かったとも解釈できる。

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