2022.11.07
# アメリカ

米中間選挙に異変…民主党岩盤支持の「黒人層」に、徐々に広がる共和党シフト

トランプ支持まで現れる地殻変動の意味
安田 佐和子 プロフィール

地殻変動の意味

なお、BLEXITのような黒人による保守派的な運動はこれが初めてではない。

保守系・共和党支持者は少数ながら古くから存在し、米連邦最高裁判所のクラレンス・トーマス判事もその一人だ。

筆者が大学生の時に出会った保守派の論客で、スタンフォード大学のシニアフェローを務めるシェルビー・スティール氏の「黒い憂鬱―90年代アメリカの新しい人種関係」は、アファーマティブ・アクションなどに一石を投じた名著で、ニューヨークタイムズベストセラー、全米批評家協会賞に輝いた。

カニエ・ウエストに話を戻すと、オバマ氏が2008年8月の民主党大会で候補指名受諾演説した際に絶賛し、大統領就任式関連イベントに出席していた。それにもかかわらず、政治的立ち位置を180度転換したのは、彼自身の保守的な宗教観に加え、民主党は黒人を票田と利用するだけで黒人のための政治を行っていないとの批判に基づく。

陰謀論に傾倒しがちとの批判が多いカニエ・ウエストの他、前述したように黒人の間でもトランプ支持者は少なくない。コメディアンやフィットネス・ユーチューバーの黒人など、足元でトランプ支持者として政治活動を展開、フォロワー数はアンチも含むのだろうが、100万人超えだ。

こうした変化を、共和党が見過ごすはずはない。2022年の予備選で共和党の黒人候補は2020年比21%増の81人と、過去最多を記録した。予備選を勝ち上がったのは28名程度(そのうち1人は上院議員候補)で、仮に全員が当選すれば上下院議員の共和党議員は、足元の3名から急増し当然ながら米国史上最多を更新する見通しだ。

 

もし共和党の黒人候補が善戦しても、米議会での議員数は民主党の58名(上院議員2人を含む)には到底及ばない。とはいえ、民主党の岩盤支持層である黒人の間で地殻変動が起こっているのは間違いない。

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