2022.11.25

「日本にストライカーがいれば…」マンガ『ブルーロック』に込められた「日本サッカー界への期待と願望」

飯田 一史 プロフィール

――原作を作るなかで気付いたサッカーの特徴は?

金城 改めて資料を読んだり関係者から話を訊いて感じるのは、リアルのサッカーはもっとシステマティックなものなんだろうな、と。選手はデータやシステム、規律やチーム内のルールを頭に入れて、それを90分間徹底している。僕も昔は試合を観ながら安易に「そこでシュート打てよ!」と思っていましたけど、勉強するほどに「いや、チームとしてそこはそんな簡単には打たないよな」と思うようになりました。だけどフォワードに関しては「それでも打ってほしい!」という想いもあり。だからそれもあって、あえて『ブルーロック』はエゴイスティックにアドリブで動く選手が多いお話にしています。

――『ブルーロック』は現代サッカーの複雑な戦術や専門用語を知らなくても読めるように描かれていますよね。

金城 僕自身、団体競技もののスポーツマンガを読んでいてルールと作戦を理解しないといけなくなると苦手に感じることがあって。だから『ブルーロック』ではいまだにオフサイドすらまともに出していないんです。ややこしいルールや用語、戦術はなるべく読者に説明しなくてもいいように、サッカー知識がなくても読めるように工夫しています。難しいことを考えずに、読者がマンガのおいしいところだけ楽しめるものにできたらと。

 

ひょっとしたらマネできるかも、というギリギリで勝負したい

――原作者として、『ブルーロック』の作画はここがすごいと感じているところは。

金城 作画のノ村さんはアニメーション的な、動いているかのような絵が巧いんです。それとキャラクターの目力に非常にこだわって描いてくださっている。ご本人もおっしゃっていたんですけれども、読み終えたときに「息をするのも忘れていた」という状態になるくらい没頭させるような絵づくり、演出を目指していると。マンガ表現として実験的なこともしているつもりなので、バトルマンガとしての視覚的なおもしろさをぜひ味わってほしいですね。

――いま「バトルマンガ」というフレーズが出てきましたが、たしかに能力バトル的な演出ですよね。

金城 ただ、ギリギリ現実でもできそう、ありえるかもしれないプレイに留めるように気を付けています。本当に龍や衝撃波は出てこない。異能力や必殺技を繰り出す路線にしても、リアル路線の本格サッカーマンガにしても、どちらもすでに偉大な作品がありますから、僕らはギリギリのところをやろう、と。少年だったころに「ひょっとしたらマネできそう」くらいのスポーツマンガが好きだったというのもあります。

――最近のサッカーのトレンドも汲もうという意識はありますか?

金城 選手の性格や特徴、どういう人が人気があるのかということは考えています。戦術も調べてはいるものの、読者が意識しなくても読める程度に入れるようにしています。どちらかというと「公開オーディションをサッカー選手でやってリアルタイムショーを配信したら盛り上がるだろう」みたいな、サッカー以外での流行りをサッカーと混ぜるような発想の方が多いかもしれません。

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