「今後期待できそうだから」と、50歳女性経営者がIT関連の投資信託を「大量買い」した結果、訪れた悲劇
赤木冴子さん(50歳女性 仮名)は父親から製造業を引き継いだ2代目の経営者です。社長とパート従業員10名程度の小規模な企業ですが、大手自動車部品メーカーを直接の客先に持ち、コロナ禍で業績は低迷しつつも影響は限定的です。
赤城さんがたまたま知り合った証券会社の営業マンは「IT関連はまだまだこれから伸びると予想されてます。それに伴ってサイバーセキュリティの必要性も高くなるので、サイバーセキュリティ株がこれからは良いと思います。」と言い、赤木さんにサイバーセキュリティ関連株を投資対象とした投資信託を勧めました。
赤木さんに勧められている投資信託は、いわゆる「テーマ型」と呼ばれるアクティブ型の投資信託の商品です。米国のIT、ハイテク系関連株を主体に、何十社といった複数の株式に分散して投資することができます。それによって、今後更に進行していくと考えられるIT、ハイテク系の株価の成長を資産に反映させることができます。
昨今のAI、IT関連の進歩を実感していた赤木さんは、営業マンの話に納得しサイバーセキュリティ関連株の投資信託に500万円投資することを決めたのでした。
ところが、赤木さんが投資した500万円はそれによって約330万円にまで値下がりし、赤木さんは170万円もの含み損を抱えることになったのでした。

赤木さんの選択は何が問題だったのか?
サイバーセキュリティ関連株の投資信託には<【前編】50歳女性経営者が絶句…ITの未来を信じ「テーマ型投資信託」を「500万円分」買った結果、「衝撃的な金額」に>で解説したような特徴があり、この商品を勧めた営業マンも業界の成長に期待し、また赤木さん自身もこの業界の成長に期待しこの商品を購入したのでした。
しかし、最も大きな問題点は赤木さんが投資した500万円の目的を把握していなかったことにあります。
今回のファンドはテーマ型の投資信託で、一つの業種に絞った運用を行うため、一般的にはハイリスク・ハイリターンな特性があります。そして、一つの業種に投資するために今後の業界の盛衰に資産の増減が左右されてしまうことです。
そのため、赤木さんが500万円を運用したかった潜在的な目的である「老後の資金のため」という点においては将来の不確実性が高く、目的に対しては不向きであったと言えるでしょう。
例えば、複数のテーマ型商品に投資することでリスクの分散も可能だったのでしょうが、そういった戦略が無く「今後期待できそうだから」と一つの業種に偏ってしまったことが要因としてあります。
また、投資信託の選定においては、その銘柄の成長だけでなく、コストも考える必要がありますね。