2022.11.16
林真理子は、なぜ「老害・暴走老人になりたくない」と心から思ったか? きっかけになった「有名人の名前」
野心を持つことの大切さを説き、46万部の大ヒットとなった林真理子『野心のすすめ』(講談社現代新書)。
このたび、それ以来9年半ぶりの新書となる『成熟スイッチ』(同)が発売され、大注目を浴びている。
ここでは、著者の林さんが「成熟」を意識したきっかけをご紹介しよう。
50年後の別人
今から50年ほど前、日本大学芸術学部の学生だった私は、池袋のあんみつ屋でアルバイトをしていました。ところが人並み外れてトロくて動きが鈍い上に、言われた仕事を右から左にすぐ忘れてしまうのです。電話に出れば、相手の電話番号を復唱することが出来ない。数字の復唱は今も苦手です。
あんみつ屋のアルバイトのヒエラルキーでは、最上位のチーフだけがフルーツあんみつのトッピングをするのを許されていました。当然、私はやらせてもらえません。アルバイト初日から押された“使えない子”の烙印が消えることはありませんでした。
そんなある日、あとから入った高校生の女の子が、大学生の私を差し置いてチーフに任命されたのです。
「うそでしょ……」
最初はちょっと驚きましたが、次の瞬間には、
「きっと私はこれからも一生チーフにはなれないんだろうな」
と思ったものです。
その私が50年の時を経て日本大学の理事長になりました。あの頃、あんみつ屋で失敗ばかりしていた自分を筆頭に、いったい誰が想像出来たでしょうか。