すべての生きものは数をかぞえている。チンパンジーや犬だけじゃない。鳥も魚もネズミもライオンもイルカも数をかぞえ、アリもハチも計算し、セミは素数の周期を把握していた!!
言語をもたない生きものも、食べて繁殖して生存するために、数を認識し、かぞえている。いや、計算すらしているのだ――この大胆な仮説を、認知神経心理学の第一人者にして数的能力の遺伝について研究を続けてきたロンドン大学名誉教授が検証。そんな知的好奇心を駆り立てる1冊『魚は数をかぞえられるか?』から注目の章をピックアップ。
言語をもたない生きものも、食べて繁殖して生存するために、数を認識し、かぞえている。いや、計算すらしているのだ――この大胆な仮説を、認知神経心理学の第一人者にして数的能力の遺伝について研究を続けてきたロンドン大学名誉教授が検証。そんな知的好奇心を駆り立てる1冊『魚は数をかぞえられるか?』から注目の章をピックアップ。
科学者たちは100年以上にわたって研究用マウスを調べてきたから、彼らの行動に関しては多くのことがわかっている。ネズミは長生きしない――研究室では2年、野生ではそれ以下だ――から、発育研究に適している。

もう1つ、ネズミを選ぶ理由で近年重要度を増しているのが、ゲノムである。ネズミのほぼすべての遺伝子は、人間の遺伝子と同じ機能を持っているので、今では科学者が多くの遺伝子を改変した系統(遺伝的変異体)を検査し、そうした遺伝子が病気や行動においてどのような役割を果たしているのか調べることができる。
「ロシアの野生ネズミ」はしたたかに狩りをする
野生のネズミの関連研究はほとんどないが、ロシアのノヴォシビルスク国立大学のソフィア・パンテレーエワと同僚たちが、ある種の自発的な行動を報告した。セスジネズミ(学名:Apodemus agrarius)はアリを狩って食べるが、アリが刺すこと、しかも多くのアリに刺されると痛いことを知っている。
この調査では、野生のネズミと研究所育ちのネズミを実験アリーナに置いて、2本の透明のトンネル内にいるアリを見せた。トンネル内のアリの数には、5対15、5対30、10対30と差をつけた。明らかになったのは、研究所育ちのネズミも野生のネズミも、ほぼ必ずアリの数が少ないほうのトンネルを選んだことだ。この論文のタイトルが、すべてを総括している。「ネズミはまず、数えてから狩りをする」