2022.11.25
# ビジネス

洗濯用洗剤「アリエール」がPRの力で「新しい市場」をつくり出せたワケ

「パーセプション」をコントロールせよ
世の中に商品・サービスがあふれる中、「認知されるだけ」では売れにくい時代にあって、「パーセプション」という発想がマーケティング業界で注目されている。「パーセプション」とは、そもそも何なのだろうか? 著書『パーセプション 市場をつくる新発想』を上梓した、PRストラテジストの本田哲也氏が、洗濯用洗剤「アリエール」、「森永ラムネ」、メルカリなどの事例をまじえて解説する。

重要なのは機能の訴求ではなかった

マーケティング業界で「パーセプション(認識)」という言葉が話題に上がることが増えた。消費者の商品やブランドに対する認識を指す。このパーセプションを変えることで、マーケティング課題を一気に変えられる大きな可能性を秘めている。

パーセプションが持つ可能性に気付く原体験となったのが、2000年代前半にPRの支援を手掛けたプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の洗濯用洗剤「アリエール」のマーケティング事例だ。

Photo by iStock
 

当時、粉末洗剤の市場は小型化に成功した花王の「アタック」が圧倒的優位な立場にあった。消費者の中で「いい洗剤=小さい洗剤」というパーセプションが確立された市場で、アリエールは新しい付加価値として「除菌」に勝機を見いだす。

しかし、この仮説に賭けて、除菌の必要の有無を尋ねる消費者インタビューを実施したところ、その結果は32人中31人が「いらない」と答えるという散々なものだった。

ここで、諦めてもよさそうなものだが、アリエールとしては既に崖っぷちにきていた。菌が多いシャツと少ないシャツなら、おそらく大半の人は菌の少ないシャツを選ぶはずだ。除菌に価値がないわけではない。「除菌をそのまま機能として訴求しても響かない」と調査結果を前向きに解釈した。

そこで、重要なのは機能訴求の工夫ではなく、消費者にきちんとベネフィット(便益)として理解してもらえることが重要であると結論づけた。

洗濯の後に天日干しすれば菌はなくなると多くの人は思っていたが、実は単に天日干ししただけでは菌はなくならない。家族のために除菌機能がある洗剤を選びたい、という潜在的ニーズに訴えかける戦略をとったのだ。

ここで戦略PRが大きな役割を果たすことになる。PRに与えられたミッションは、アリエールという商品の機能訴求ではなく、「通常の洗濯では菌は残っている」というパーセプションを世の中に生み出すことだった。

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