日本の自給率は「最低水準」
岸田政権は2022年度第2次補正予算案を編成した。ロシアによるウクライナ侵略が引き金となって高騰した電気やガスの代金を大幅に軽減するなど、またしてもバラマキ色が強いメニューが並ぶ。そうした中、安倍政権・菅政権時代の「官邸主導」の農政が終焉し、最近になって息を吹き返した農林族議員やJAグループは新たな利権として食料安全保障に目を付け始めた。
補正予算では農林族らの要求通り、農政に巨額の血税が投入されることが確定した。ただ、国は現在の日本の農政で喫緊の課題である「食料安保」について、明確なビジョンを描けずにいる。そのため、小規模な農林漁業者の保護にとどまり、中長期的な農林水産業の発展は実現しそうにない。

世界ではこの1年間、ロシアがウクライナに仕掛けた一方的な戦争により、食料価格の高騰が継続。米欧は歴史的なインフレに見舞われている。日本も小麦やガソリンなど生産に欠かせない商品の急騰のあおりを受け、今年だけで既に約2万点もの食品が値上がりしている。世界情勢が不安定なままだと、今後もこうした傾向が続く可能性が高い。
そもそも日本の食料安全保障は、ロシアによるウクライナ侵略が始まる前から脆弱だった。コメや魚が食生活の中心だった昭和期には、日本のカロリーベースの食料自給率は概ね5〜6割台で推移していた。しかし、平成に入って以降は3〜4割台と低迷。牛肉や豚肉など輸入品の消費が拡大した結果、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも最低水準にある。