パンデミックで枯渇する「種」「エサ」「ヒナ」
新型コロナのパンデミックが収束へと向かいつつある中、インバウンド(外国人観光客)の往来が復活して街は活気を取り戻しつつある。コロナによって到来した異常な世界を、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言わんばかりに忘却するようではいけない。
コロナ禍の日本では、食料生産を脅かす深刻な事態が訪れていた。
〈二〇二〇年に発生した「コロナショック」は、世界中の物流に大きな影響を与えた。
食料の輸出入自体への影響も大きかったが、食料を生産するための生産資材が、日本に入って来なくなったことのほうが、より重要な問題である。
生産資材というのは、農機具のほか、人手や肥料、種、ヒナなど、農産物の生産要素全般のことだ。
日本では野菜の種の九割を輸入に頼っている。野菜自体の自給率は八〇パーセントあるが、種を計算に入れると、真の自給率は八パーセントしかない。
種は日本の種会社が売っているものの、約九割は海外の企業に生産委託しているのが現状だ。
しかし、コロナショックにより、海外の採種圃場(ほじょう)との行き来ができず、輸入がストップするというリスクに直面してしまった。〉(『世界で最初に飢えるのは日本』20ページ)
畜産業の命綱は「エサ」と「ヒナ」であるという指摘は、多くの一般読者にとって目からウロコが落ちるはずだ。
〈日本の畜産は、エサを海外に依存している。たとえば、鶏の卵は、養鶏業の皆さんの頑張りもあって、九七パーセントを自給できているが、鶏の主たるエサであるトウモロコシの自給率は、ほぼゼロである。
また、トウモロコシに関しては、中国の爆買いによって、世界中で価格が上昇しており、日本が買い負けるリスクも高まっている。そもそも、鶏のヒナは、ほぼ一〇〇パーセント輸入に頼っている。
今なお続くコロナショックや戦争によって、エサやヒナの輸入が止まってしまえば、鶏卵の生産量はおそらく一割程度まで落ち込んでしまうだろう。〉(『世界で最初に飢えるのは日本』20〜21ページ)